通信と放送の融合に向けた政策課題について議論している竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」は,2006年5月10日に第11回会合を開き,これまでの議論の論点を整理した。論点は,!)通信・放送融合の促進策,!)通信事業の競争促進策,!)放送業界の規制緩和策,!)NHKの抜本改革――などである。今回の会合では,これらの論点に含まれる個別案件について,いくつかの方針を固めた。

 論点の一つである通信事業の競争促進では,NTTの今後の在り方について懇談会メンバーが「少なくともNTTグループのアクセス回線部門の独立性を現状より高めるるべき」とする意見で一致した。現状の会計分離だけでなく,サービス部門との人事交流を禁止したり,NTTブランドの使用を禁止するなどの措置を取り,より独立性の高い社内組織に変えるべきだという。そのうえで今後,アクセス回線部門の分社化やNTT法改正によるグループ企業の資本分離といった,より踏み込んだ再編案についてもメリット・デメリットをまとめる考えである。懇談会は最終報告を5月中にも作成する見通しで,NTTの在り方に関する考え方も,今回の方針がほぼそのまま盛り込まれることになりそうだ。

 こうした方針に対し,通信事業者各社は様々な反応を見せている。NTTグループのアクセス回線部門の分離は,KDDIとソフトバンクが懇談会の会合で主張していたことであり,両社にとっては有利なものといえる。しかし,この2社以外の通信事業者からは「インフラからアプリケーションまで統合して競争できる,大手3グループ間の競争を前提とした議論でしかない」と反発する声も聞こえてくる。「直収型固定電話サービスが大手3社の競争になったことからも分かるように,アクセス網の分離が進んでも寡占状態が強化されるだけだ」という。3グループ間の競争強化によってほかの事業者が排除され,結果的に通信料金は高止まりすると反発する(詳細は日経ニューメディア2006年5月15日号に掲載)。