写真1●Linuxデスクトップによる授業の模様(CECの報告書より転載)
写真1●Linuxデスクトップによる授業の模様(CECの報告書より転載)
[画像のクリックで拡大表示]
図1●実証実験の概要(CECの報告書より転載)
図1●実証実験の概要(CECの報告書より転載)
[画像のクリックで拡大表示]
図2●総社市の児童生徒に対するアンケート「コンピュータを使うのは簡単でしたか?」(CECの報告書より転載)
図2●総社市の児童生徒に対するアンケート「コンピュータを使うのは簡単でしたか?」(CECの報告書より転載)
[画像のクリックで拡大表示]
図3●総社市で利用したシンクライアントの構成(CECの報告書より転載)
図3●総社市で利用したシンクライアントの構成(CECの報告書より転載)
[画像のクリックで拡大表示]

 「『オープンソースは簡単』と回答した児童生徒は約90%,これに対し教員は約60%にとどまった」---財団法人 コンピュータ教育開発センター(CEC)は,小中学校11校6291名を対象に706台を導入したオープンソース・デスクトップ導入実験の報告書を公開した。

 この実証実験は「Open School Platform プロジェクト」として,CECが経済産業省の委託を受け実施したもの。岐阜県,茨城県つくば市,京都府の京田辺市,岡山県総社市の4地域で,インターネット調べ学習やデジカメ画像での資料作成などの実践授業をLinux上で行った。

 経済産業省は2004年度に「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」として,全国の9校に307台のLinux専用パソコンを導入し3089名が使用した。CD起動のLinux「KNOPPIX」を利用した実験には,8校で673名の生徒が使用した(関連記事)。岐阜県と茨城県つくば市は2004年度から継続して実験を行っている。

 岡山県総社市で実施したアンケートでは,児童生徒の約90%がオープンソース環境を「とても簡単」または「まあまあ簡単」と回答した。しかし教員の回答では「とても簡単」または「まあまあ簡単」は約60%にとどまった。「授業の組み立てや教材を作成する教員の視点では,非OSSとの操作性の差異や授業中でのトラブルへの不安(不信)感が色濃く現れていると言っても過言ではない。また,OSS環境のソフトの少なさに言及した意見が目立った」(CEC)。

 また1万7150点の教育用コンテンツを調査したところ,97.3%のコンテンツがオープンソース環境でも問題なく利用できるという。コンテンツが利用できない原因は,(A)Shockwave,一太郎など,プラグインが存在せず表示できないものが55件。(B)再生不可能な動画形式,あるいは埋め込み動画のHTML記述の非互換性が原因となっているものが161件。(C)Flashで日本語表示が乱れる,ブラウザのリサイズ時に表示領域がリサイズしないものが186件。(D)Microsoft Word文書をブラウザ内でOpenOffice.orgプラグインを利用し表示する際のエラーが41件。(B)を含め179点のコンテンツを,利用できるよう修正したという。

 導入コストでは,オープンソース構成は非オープンソース構成に比べて安価であると試算している。クライアント40台,サーバー1台のケースで,オープンソース構成ではハードウエアを含め318万円から466万円。非オープンソース構成では512万円となるとしている。

 また岡山県総社市では,Linuxベースのシンクライアント環境を使用した。設定作業に要する時間が,既存の環境では1台当り約6.5分,38台で247分を要するのに対し,シンクライアントでは31分で済んだという。

 CECでは「児童生徒は適応力も高く、さほど違和感なく利用していた。しかし,教える側の教員は既存の非オープンソース環境に慣れており,オープンソース環境に移行することに対し大きな抵抗があり,実際にオープンソース環境の習得に苦労していた」として,今後の課題として「教員を対象とした多面的なサポートが必要」と提言している。またそのほか操作性や,教育コンテンツの互換性向上なども課題にあげている。

 経産省とCECは,今年度も「Open School Platform」プロジェクトを継続する。5月後半にも公募を開始する予定である。