カウネットアネックスが取り扱う制服のカタログ
カウネットアネックスが取り扱う制服のカタログ
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 複数の制服メーカーのカタログを中小の事業所にまとめて送ったら、OL向けのオフィスウエアがこの1年で1万着も売れた——。オフィス向け文房具の通信販売サービスを手掛けるカウネット(東京・港区)は、2004年7月に開始した「通常のカタログに掲載していない商品」の通販サービスに大きな手応えを感じている。

 このサービスは「カウネットアネックス」。通常のカタログを顧客に送付する代わりに、メーカーが営業用に作っている制服などのカタログを、メーカーに代わってカウネットが顧客のオフィスに配送する。顧客はメーカーのカタログに載っている商品の品番をカウネットの注文番号に置き換えて、インターネットで注文できる。

 カウネットの2006年3月期の売上高は、2005年3月から始めたアネックスでの制服販売が立ち上がったこともあり、前期比10.2%増の350億円となった。今期は414億円を目指している。

 アネックスが顧客に好評なのは、商品の選択肢が一気に何倍にも増えることだ。しかもメーカー自身が作っているカタログだから、制服のパンフレットはまるで、美人モデルが流行の服を着こんだファッション誌のようだ。色もサイズも豊富にそろう。世の中には、これほど多くの制服があったのかと驚かされる。その中から自由に制服を選択できるのは、実際に制服を着るOLにとってはありがたいことであり、楽しいことでもある。

 現在アネックスでは、OL向けの制服のほか、ミドリ安全(東京・渋谷区)の安全靴、シャープのレジスター、各種セキュリティー製品など6分野の商品を取り扱っている。制服の販売が好調なことを受け、カウネットは今期、アネックスの品ぞろえを強化していく方針だ。

たまにしか売れない商品に勝機

 アネックスがユニークなのは、カウネットが同社の物流センターに該当商品の在庫を持たないことだ。カウネットは年2回、オフィス用品を掲載した分厚いカタログを発行しており、カタログに掲載している1万9500点の商品については、原則としてすべての商品の在庫を物流センターに保管している。

 カウネットはライバルのアスクルと同様に、カタログ掲載商品なら注文を受けた当日もしくは翌日に顧客のオフィスに商品を届けていることにしている。即日発送を実現するには、センターでの在庫保管が欠かせなくなる。

 そういう視点で見ると、アネックスで取り扱う商品はカウネットが在庫リスクを負ってまでセンターに商品を保管しておけない商品群ということになる。つまり、カタログに掲載するほどの売れ筋ではないのだ。制服の場合、ブラウスなどの限られた売れ筋だけは通常のカタログに載せているが、幅広く取りそろえるほど売れるものではない。在庫リスクを優先してしまう。

 こうした「たまにしか売れないカタログに載せられない商品」が欲しい顧客に対しては、カウネットはこれまでメーカーからその都度取り寄せて、後日に配送していた。だが配送は注文の10日~2週間後といった具合に時間がかかるのが実情だった。

 そこでカウネットは制服などの特定メーカーと個別に交渉し、注文から「4営業日」で配達できる商品についてはアネックス商品として取り扱いを始めた。カウネット側で在庫を持たなくても、4営業日で届けることを顧客に約束した点がアネックスの特徴といえる。

 制服の場合、カウネットの呼びかけに応じたのは4社だった。今はこの4社のカタログをセットにし、カウネットの負担で顧客に配送している。その代わり、制服のカタログ費用はメーカー持ちだ。

 メーカーは4営業日で顧客に商品を配送できるように、いつでもカタログ商品の在庫を自社で持っている必要がある。その点を了承できれば、カウネットに求めに応じられる。

 アネックスが勝機を得たもう1つの理由は、制服メーカーの営業担当者が訪れることなど滅多にない中小の事業所で働くOLにも、数多くの種類の中から制服を選ぶ喜びを提供できたことだ。制服メーカーもそうした自分たちの営業網の手薄なところをカバーできる。

 アネックスで制服を買った顧客の中には「事業所内に女性は自分1人」といった人もいる。こうした拠点に制服メーカーの営業が来ることはない。それでもかわいい制服を着たいと思うのが女性の心理だろう。

 アネックスがツボにはまったのは、こうした中小の事業所でオフィス用品を注文しているのが彼女たちだったということ。そこに目がけて、ピンポイントにメーカーのカタログを送付したことが奏功した。