「情報通信審議会 情報通信技術分科会 5GHz帯無線アクセスシステム委員会作業班」の第12回会合の様子
「情報通信審議会 情報通信技術分科会 5GHz帯無線アクセスシステム委員会作業班」の第12回会合の様子
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 総務省は5月9日,「情報通信審議会 情報通信技術分科会 5GHz帯無線アクセスシステム委員会作業班」(以下作業班)の第12回会合を開催(写真),次世代無線LAN規格「IEEE 802.11n」(11n)の利用に向けて,チャネルの広帯域化などの技術検討を開始した。11nは100Mビット/秒以上の実効スループットを実現する次世代無線LANの規格。作業班が11nを対象とした技術検討をするのは今回が初めてである。7月までに検討結果を取りまとめる予定で,その後広く一般から意見を求めるパブリック・コメントを募り,最終報告書案を作成。9月の答申を目指す。

 IEEE 802.11nの規格は現在「ドラフト」(草案)の策定段階。正式な規格の制定は2007年春ころの見込みである。ドラフト段階ながら,作業班が約2カ月という短期間で技術検討の結果を取りまとめようとしているのは,高速な無線LAN機器を利用するためには省令改正などが必要になるから。11nは,高解像度の映像を扱う情報家電の伝送手段や,光ファイバの引き込みが難しい地域でのFTTH代替手段としても期待されており,早期に利用環境を整備することが求められている。

 作業班で検討する課題は,(1)周波数利用効率など高速な無線LANに求められる技術的条件,(2)他の無線システムや同一無線システム間での共用条件の2点。複数のアンテナで送受信する「MIMO」(multiple input multiple output)や最大40MHzのチャネル幅を使って伝送速度を高速化することができる11nの仕様を前提に検討を進める。

 11nの「Draft ver1.0」については,米エアゴー・ネットワークスが5月2日,次の段階に進むための承認を「IEEE802.11n作業部会」から得られなかったと発表。まだ規格化作業は揺れている状況だ。とはいえ,今回総務省が検討対象とするMIMOや40MHzのチャネル幅を使った高速化については11nの“規定路線”であり,総務省は現行のドラフトをベースに検討作業を進める。