図1 「シナリオ」を作成しているところ。NECシステムテクノロジーが販売する「RoboStudio」というツールを使えば、GUIを使ってロボットの動きや発話の内容を設定できる。今回は、同じシナリオでCGキャラクターを動かすことが可能になった
図1 「シナリオ」を作成しているところ。NECシステムテクノロジーが販売する「RoboStudio」というツールを使えば、GUIを使ってロボットの動きや発話の内容を設定できる。今回は、同じシナリオでCGキャラクターを動かすことが可能になった
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図2 ロボット「PaPeRo」に、店を推薦してくれるように話しかけているところ
図2 ロボット「PaPeRo」に、店を推薦してくれるように話しかけているところ
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図3 カーナビに移動したPaPeRo。店の位置や、詳しい情報を教えてくれる
図3 カーナビに移動したPaPeRo。店の位置や、詳しい情報を教えてくれる
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図4 PDAに移動したPaPeRoは、音声ではなく文字で情報を提供する
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 NECは2006年5月9日、ロボットを用いた新たなユーザーインタフェース技術を開発したと発表した。実物のロボットと、コンピュータグラフィックス(CG)で作られたキャラクターとを連携させ、あたかも両者が同じものであるかのように動作させることができる。例えば、家で使っているロボットを、外出時には携帯端末に移動させて連れて行くといった使い方が可能になる。ユーザーが、自分の状況に応じてロボットを“乗り移らせる”ようなイメージだ。

 NECは、1997年から家庭向けロボット「PaPeRo」の開発に取り組んできた。二足歩行などハードウエア的に複雑な機構を追求するのではなく、人間とのコミュニケーション機能を充実させているのが特徴。家庭内で人間をサポートし、楽しませられるロボットを目指している。内部の部品はノートパソコンとほぼ共通。まだ研究段階だが、発売・量産されればノートパソコン並みの価格に落ち着く可能性もある。

 今回の発表では、PaPeRoの開発で培った人間とのコミュニケーション機能を、家庭外のさまざまな環境で利用可能にすることを狙った。そのために、ロボットと同様の動きをCGキャラクターで実現する仕組みを盛り込んだ。具体的には、ロボットの動作を制御するためのデータ(「シナリオ」と呼ばれる)を使って、CGキャラクターを制御できるようにした(図1)。
 また、ロボットがユーザーと対話をした記憶などを、CGキャラクターに無線で転送することも可能にした。家でのロボットとの会話履歴が携帯端末上のCGキャラクターに引き継がれるため、ユーザーとのやり取りをスムーズに再開できる。

 デモでは、デートの計画を立て、実際に店に向かうまでの様子が披露された。まずユーザーが、家庭にあるロボットのPaPeRoに、デートに向いている店を教えてくれるように頼む(図2)。するとPaPeRoはインターネットから情報を収集し、店を推薦する。そこでユーザーはカーナビにPaPeRoを移動させ、外出する(図3)。
 カーナビのPaPeRoには、ユーザーとの会話の履歴や店舗の情報なども転送されるため、外出後も会話の続きを楽しめる。自動車から降りて店に向かう際には、PDAにPaPeRoを移動させる(図4)。PaPeRoとのやり取りの方法は状況に応じて変えることができ、例えばPDAの利用時には音声ではなく、文字とタッチペンを使うといったことが可能。

 NECはこの技術を、ロボット開発に携わる企業や研究者に売り込んでいく。同社は既に、シナリオの開発ツールである「RoboStudio」(販売はNECシステムテクノロジー)を販売しており、要望があればこのツールに今回の技術を搭載する予定。早ければ2006年内にも商用化が可能だ。さらにロボットだけでなく、情報家電などの組み込み機器開発にもこの技術を応用することを考えているという。