写真1 PS3の発表会風景
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写真2 発売時に世界全体で200万台,2006年末に400万台,2007年3月末までに600万台の出荷を目指す
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写真3 新機能を備えたコントローラを使って飛行機や水槽のアヒルを動かすデモ
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写真4 カメラのEYE TOYによって,カード・ゲームの絵柄を認識し,それに対応したキャラクターを画面で表示させる対戦型カード・ゲーム
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 ソニー・コンピュータエンタテインメントは,米国ロサンゼルスで記者会見を開き,次世代ゲーム機「プレイステーション 3」の発売計画を明らかにした。日本の2006年11月11日を皮切りに,欧米で同17日に発売する。2006年春の発売が見送られていたPS3だが,今回は発売日を明確にしたことで,さらなる出荷延期は許されないところだ。

 価格は内蔵する2.5インチ・ハード・ディスク装置(HDD)の容量に応じて異なる。日本では20Gバイト対応品が5万9800円で,60Gバイト品はオープン価格となる(写真1)。米国では20Gバイト品が499米ドル,60Gバイト品が599米ドル,欧州ではそれぞれ499ユーロ/599ユーロを予定する。プレイステーション2は発売当初の価格が3万9800円(税別)で周囲を驚かせたのに対して,PS3の価格設定は大方の予想範囲内となった。

 今回,出荷台数の目標値も明らかにした。発売時に世界全体で200万台,2006年末に400万台,そして2007年3月末までに600万台の出荷を目指す(写真2)。プレイステーション 2の際には発売から10カ月で600万台を突破したのに比べると,世界全体で見れば普及のペースは早い。ただし,世界同時発売という条件を加味すると,地域別の普及はむしろペースダウンともいえる。PS2は日本で発売後4カ月以内に250万台以上,米国で500万台以上,欧州で400万台弱を出荷した実績がある。この勢いに比べると,4カ月ちょっとの期間で600万台というのは控えめな数字だ。価格が高めでも,この程度の普及は見込めるとの判断があったのだろう。

 PS3のハードウエアおよびソフトウエアの基本仕様はすでに発表済みである(2006年3月15日の発表による記事)。今回は新たに,コントローラの新機能が明らかになった。6軸の検出機能がある。「左右の傾き」「前後の傾き」「左右の振り」というコントローラの姿勢に関する三つの軸と,コントローラ自体のX方向/Y方向/Z方向の加速度を検出する。これにより,コントローラ自体を動かすことで,ゲーム内のキャラクターを操れるという。会場では,このコントローラを使って,飛行機や水槽のアヒルを動かすデモを見せた(写真3)。

 PS3に対して「重厚長大主義」との批判も聞かれる。ハードウエアの性能を使い切るソフトウエア開発に,10数億円の開発費がかかるケースが多いことから,ソフトウエアの品揃えが進まないのではとの憶測がある。今回の発表会場では,こうした懸念材料を拭い去るかのように,次から次へとゲーム・タイトルを披露した。「ファイナルファンタジー」や「メタルギア」「リッジレーサー」「鉄拳」といった定番ソフトの後継版だけではなく,新しいカテゴリーのソフトウエア開発にも同社は力を注ぐ。例えば,カメラ「EYE TOY」によって,カード・ゲームの絵柄を認識し,それに対応したキャラクターを画面で表示させる対戦型カード・ゲームのデモを見せた(写真4)。このところゲーム・ソフト市場は縮小傾向にある中,こうした新作に対する同社の期待は大きい。

 PS3本体の発売時期に,どれほどの数のゲーム・タイトルが店頭に並ぶか,それはひとえにソフトウエア・ベンダーの腕にかかっている。現在,11カ国280社に対して合計1万台の開発キットを出荷した。米国時間で5月9日から始まるゲーム関連の展示会「E3」の会場では,実機の上で動作するゲーム・タイトルも楽しめるという。主要ベンダーは一応,デモの一部を披露するところまでは漕ぎ着けたが,残りの半年間で製品としての完成度を高めることに心血を注ぐことになる。ただし,その半年後もスタート地点に過ぎない。PS3の性能をフルに出し切るタイトルの登場は,まだ先のことになる。既存のゲーム・タイトルの延長ではない,新機軸のエンターテインメントを示せたとき,PS3に対する「重厚長大主義」との批判が雲散霧消する。