マイクロソフトは2006年5月9日、同社のWebサイトよりInternet Explorer(IE) 7 Beta 2 日本語版の提供を開始。併せて報道関係者向けに説明会を開催した。同社Windows本部 ビジネスWindows製品部の中川哲マネージャによると、「IE 6はセキュリティを重視したブラウザーだった。しかし、セキュリティの高さと利便性は相反する関係にある。セキュリティ機能を強化しつつ、利便性を改善したのがIE 7の大きな特徴」だという。
以下、公開されたIE 7 Beta 2の画像を交えつつ、その主な特徴を見ていこう。
整理統合されたツールバー
まずデザインでは、メニューバーやツールバーの配置が大幅に変更されている。
IE 6では各種のインタフェースが、画面の上からメニューバー、ツールバー、アドレスバーの順番に配置されていた。IE 7ではアドレスバーが画面の最も上に移動し、ツールバーボタンは全体に小さくなって、配置が変わっている。例えば「戻る」「進む」ボタンはアドレスバーの左隣、「更新」「中止」ボタンはアドレスバーの右隣に移動した。
アドレスバーの下には「お気に入りセンター」と「お気に入りに追加」のボタンが置かれ、その右隣に展開中のWebページがタブの形で一覧表示される(タブ機能については後述)。タブ一覧の右隣には「ホーム」「フィード」「印刷」「ページ」「ツール」の各種ボタンがある。
IE 7ではこのようにメニューやボタンを統廃合・配置換えすることによって、よりシンプルに、より使いやすくしようとしている。例えば「お気に入り」の場合、以前のIE 6では初期設定で「お気に入り」ボタンと「お気に入り」メニューの2つが表示され、機能的に重複している部分があった。IE 7では最初は「お気に入りセンター」ボタンしか表示されない。メニューバーは、[Alt]キーを押すまで非表示になっている。さらに、IE 6では独立したボタンだった「履歴」も、IE 7では「お気に入りセンター」ボタンから開くことになる。
新インタフェースは画面を広く使える点では良いのだが、以前のIEに親しんだユーザーは慣れるまで戸惑うだろう。特に使用頻度の高い「戻る」「進む」「お気に入り」「ホーム」の各種ボタンに関しては、ついうっかりマウスで以前あった場所をクリックしてしまう。
展開中のタブをサムネイル表示
表示機能ではページズームが追加された。Webページのテキストだけでなく、画像も含めて画面を拡大表示するため、CSSでフォントサイズを固定している場合にも拡大できるようになった。
タブブラウジング機能も大きな特徴だ。この機能を使うと、複数のWebページを1つの画面内に表示して、タブで切り替えながら閲覧できる。「Firefox」「Opera」など他のWebブラウザーには以前から備わっていた機能だ。IE 6では、 MSN サーチ ツールバー with Windows デスクトップ サーチを組み込まないとタブ機能が使えなかったが、IE 7でようやく標準搭載となった。
展開中のタブはアドレスバーの下に一覧で表示される。新しいタブを開くには、タブ一覧の右端にある空白のタブをクリックするか、Webページのハイパーリンク上で右クリックし、現れたメニューで「新しいタブで開く」を選択する。
タブ一覧の左端にある「クイックタブ」ボタンを押すと、展開中のタブをサムネイルのように表示してくれる。サムネイルをクリックすれば当該のWebページを表示する。
「お気に入り」欄でフォルダー名の右端に出てくる矢印のアイコンをクリックすると、フォルダー内のWebページをタブで一斉に開くこともできる。タブ機能を生かして、複数のWebページをホームページとして登録することも可能となった。
もっとも、Beta 2を見る限りは、他のブラウザーに比べてIE 7のタブ機能が特に優れているとは言えない。例えば、FirefoxやOperaが持っているドラッグ・アンド・ドロップによるタブ位置の入れ替えや、タブを直接ドラッグ・アンド・ドロップしてお気に入りに登録するといった機能はないようだ。
ようやくRSSに対応
ウインドウ右上には新しく、検索ボックスが配置されている。検索サイトを開かなくても、この欄からいつでもインターネット検索が可能だ。マイクロソフトのMSNのほか、Yahoo!、Googleなどさまざまな検索サイトをこの欄に登録しておき、ドロップダウンリストから随時切り替えて使える。
使い勝手の点で画期的なのは、ブラウザーに表示されたWebページを見たままに印刷できる機能だ。従来のIE 6では、Webページの作り次第で画面の端が切れて印刷される現象が起こった。IE 7では、初期状態でWebページを1ページの幅にぴったり収めて印刷する設定になっている。
RSS(※1)に対応したのも特徴の一つだ。IE 7でRSSが配信されているWebサイトにアクセスすると、専用の「フィード」ボタンがオレンジ色に変わる。このボタンから、好みのRSSフィードを「お気に入りセンター」の「フィード」欄に登録できる。「インターネット オプション」の「コンテンツ」タブにある「フィード」欄で「設定」ボタンを押すと、購読中のフィードの更新スケジュールや、「フィードが見つかった際に音を鳴らす」などのアラートを設定することもできる。
フィッシング詐欺対策などを強化
IE 7には多数のセキュリティ対策機能が追加されている。代表的なのは、フィッシング詐欺(※2)対策機能だ。IE 7のフィッシング詐欺対策機能では、(1)ユーザーが正当なWebサイトと報告したアドレスのリストと、アクセスを試みたWebサイトのアドレスを比較し、(2)アクセスを試みたWebサイトに対して、フィッシング詐欺にありがちな特徴がないかを調べ、(3)アクセスを試みたサイトのアドレスをマイクロソフトに送信。既知のフィッシング詐欺サイトのリストと照合する。
以上の分析結果から、「疑わしいWebサイト」と判断された場合は黄色い警告画面が出現。明らかにフィッシング詐欺サイトと判定されればアドレスバーが赤くなり、アクセスをブロックする。ユーザーがフィッシング詐欺を発見した場合の報告機能も備えている。
また、偽のサイトと見分けやすくするために、以前はブラウザーの右下に小さく表示されていたSSL対応サイトの鍵アイコンを、目立つようにアドレスバーの横に表示するようになった。鍵アイコンをクリックすると、SSLの証明書の情報が表示される。
従来はそれぞれ別の設定画面から消さなければならなかったインターネット一時ファイル、Cookie、Webサイトの閲覧履歴、フォームに入力したパスワードやデータの履歴(オートコンプリート)など、プライバシーにかかわる情報を1つのボタンで消すことができるようになったのも便利だ。
Windows XP SP 2から搭載された「アドオンの管理」機能も強化されている。アドオンの有効/無効だけでなく、一部のアドオンに関しては削除が可能となった。
さらに、IE 7のセキュリティ設定が推奨以下の状態に置かれていると警告を発する「Fix My Settings」機能が追加された。例えば、「ツール」→「インターネットオプション」→「セキュリティ」タブで「レベルのカスタマイズ」ボタンを押すと、詳細なセキュリティ設定項目が現れるのはご存じだろう。ここに、チェックすると表示が赤く変化する「(セキュリティで保護されていない)」という項目がある。この項目をチェックして設定を確定すると、警告のダイアログボックスが出現し、その後、情報バーに常に警告が出るようになる。情報バーをクリックすれば、安全な設定に自動で戻してくれる。
公開となったBeta 2は、正式版に含まれる機能をすべて備えている。ただし、まだ不具合が残っている可能性があるため、試用には注意が必要だ。