千葉県銚子市の島田総合病院(病床数204、嶋田賢院長)は5月15日から、新しい医療情報システムを稼働させる。外来・入院の受付から、検査、処置、会計、診療報酬の請求など院内の基幹業務を一元管理。省力化によって作業時間を3割程度削減し、医療制度改革による収入減に備えるとともに、医師や看護師が患者と接することができる時間を増やす。新システムを介して、医師と看護師の間で患者情報を確実に引き継げるようにすることで、医療事故を未然に防ぐ効果も狙っている。
新システムは入院・外来の患者ごとに、内服薬を出す、点滴をうつ、レントゲンをとる、血液検査をするといった医師のオーダー(指示)を一元管理。オーダーの内容が確実に会計まで引き継がれる。レントゲン画像や検査結果をパソコン画面から引き出せるため、画像フィルムを運んだり探したりする手間が省けるほか、「取り違い」のようなミスも防止できる。
島田総合病院は、韓国ICM社(日本国内での窓口はIJT=本社東京・中央)の総合医療情報システムを国内で初めて採用した。ICM社のシステムは韓国の400床以上の大病院でトップシェアを誇る。島田総合病院のシステム投資額は数億円で、国内大手ベンダーの同種のソリューション価格の半分以下とみられる。
韓国は医療情報化の先進国で、日本では紙が多く残るレセプト(診療報酬請求明細書)の電子化普及率は95%を超えている。韓国は1970年代から日本の制度を参考にした医療保険制度を実施しており、韓国のシステムは日本の各種制度との親和性が高い。
島田総合病院は4月に、約30億円を投じた新病棟を稼働させた。「人はみんな死ぬ。最期を迎えようとする患者さんを受け入れて、感謝してもらえるような医療を提供したい」(嶋田院長)。高齢者の「ターミナル・ケア(終末医療・介護)」を念頭に置き、銚子の街や海を一望できる食堂や、温泉施設、付き添いの家族のための休憩室などを充実させた。医療改革の影響による厳しい経営状態のなかで理想の医療を目指すために、徹底したIT活用でコスト削減を目指した。