Bdale Garbee氏
Bdale Garbee氏
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 米Hewlett-Packard(HP)がオープンソース・ソフトウエア事業を強化している。日本でも専門組織を設立し,オープンソース・ソフトウエアによるシステム基盤やサービスの提供を強化する(関連記事)。

 コミュニティとの関わりも深い。HPでオープンソース/Linuxの技術責任者を務めるOpen Source & Linux Chief TechnologistのBdale Garbee氏は,ボランティア・ベースのLinuxディストリビューション・プロジェクトであるDebian Projectのリーダーも務めていた。Garbee氏にHPの取り組みを聞いた。

---HPはオープンソース・ソフトウエアにどのようにコミットしているのか。

 HPには,Linuxとオープンソースを専門とする2500名以上の開発者がいる。またLinuxとオープンソースを実装,およびサポートする6500名以上のサービス・プロフェッショナルがいる。200以上の製品にオープンソース・ソフトウエアが組み込まれて出荷されている。60以上のオープンソース・ソフトウエア・プロジェクトが開始されている。また300以上のプリンタ・ドライバをオープンソース・ソフトウエアとしてコミュニティに提供している。

---HPは自身がオープンソースのビッグ・ユーザーだというが,最も大規模なシステムは。

 社内エンタープライズ・ディレクトリ・システムだろう。15万人以上いる全社員の情報を格納しており,月間何十億というトランザクションを実行を実行している。Linux,OpenLDAPをベースにしており,100%オープンソースで構築されている。

 XDと呼ぶ社外向けのディレクトリ・システムは,45万の取引先と顧客のデータを管理しており,これもOpenLDAPベースだ。

 bind,DHCP,NTPもLinux上のオープンソース・ソフトウエアを使用しており,Windowsクライアントもオープンソース・ソフトウエアを使用している。

---Linuxディストリビューション選択に関する方針は。

 3つのストラテジーがある。ひとつは,ワールドワイドでサポートできるLinuxディストリビューションで,Red Hat Enterprise LinuxとNovell SUSE Linuxだ。

 2つめは,ある地域でサポートするLinux。(ミラクル・リナックスと中国,韓国企業が開発している)Asianuxがよい例で,HPのハードウエアでAsianuxを認定している。

 もうひとつが,特定業種業務向けのOSが必要な場合で,HPでは通信事業者向けにOSDLが規定するCarrier Grade Linux(CGL)仕様を実装したLinuxを納入したが,これにはDebianを採用している。

 CGLには,クラッシュ・ダンプやカーネル・モニタリングといった,Linuxカーネルに標準では実装されていない機能が必要になる。商用ディストリビューションのベンダーに実装を提案したが,彼らは時期尚早として断った。そこでボランティア・ベースのディストリビューションであるDebianを使用した。HPとしてもよいビジネスになっている。

---検証済のオープンソース・ミドルウエアの組み合わせ(スタック)を提供するサービスを発表した(関連記事)。オープンソース・スタックは多くのベンダーが提供を始めているが,需要はあるのか。

 HPは2年前から,オープンソース・ミドルウエアをコンポーネントとして認定しサポートした最初の企業だと思っている。他のベンダーと違い,HPは包括的に,ライフサイクルを通じてサポートする。HPには100万台以上のLinuxサーバーを販売した実績がある。

 サービス・メニューとして名前をつける前からの顧客だが,航空機の座席予約システムを運営しているSabreにMySQLのサービスを提供している(資料)。コンチネンタル航空には座席予約システムにはMySQL,JBossのサービスを提供した。またDreamWorksにもJBossのサポート・サービスを提供している。