西京銀行の銭谷美幸・副頭取
西京銀行の銭谷美幸・副頭取
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5月8日に新装した西京銀行の東京支店。融資相談などに使うスペースを拡充
5月8日に新装した西京銀行の東京支店。融資相談などに使うスペースを拡充
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 第二地銀の西京銀行(山口県周南市)は5月8日、東京の拠点を拡充した。東京都中央区にある東京本部・東京支店のスペースを従来の2倍の約700平方メートルまで増床。人員も現在の25人から、2年以内に全行員の1割近い50人程度まで増やす。

 東京近郊以外に本拠を置く地銀として最大規模の拠点を設けることで、東京地区での収益拡大や、情報収集機能の強化を狙う。西京銀行はインターネット専業銀行設立を目指してライブドアと提携していたが、3月29日に提携を解消した。拡充した東京本部は、新たなネット専業銀行設立の準備機能も担う。

 こうした東京戦略の方向性を、西京銀行の銭谷(ぜにや)美幸・副頭取(代表取締役)に聞いた。銭谷副頭取は、1995年に設立間もない再就職支援事業のヒュー・マネジメント・ジャパンに入社。財務担当役員として同社を業界大手に育て、ジャスダック取引所上場を果たした後、2004年に西京銀行へ転身。2005年6月に女性として邦銀初の副頭取に就任している。

---東京本部強化の狙いは。

 地銀は地域に根ざした企業活動を展開しているが、それだけでは縮小均衡が目に見えている。独自性のある商品で東京における収益を拡大し、地域に還元していきたい。

 東京戦略の核になるのが女性向け商品だ。例えば、2005年8月に始めた女性起業家支援ローン「L・POP(エルポップ)」の場合、2006年3月末の融資先は飲食店や美容院など85件、約7億円の融資残高がある。しかし、融資先のうち東京はまだ数件で、(西京銀行の本拠地である)山口県内が大半だ。山口だけでもこれだけの需要があるのだから、東京でももっと融資先を開拓できるはず。そのために、東京でも相談受付などの体制を強化した。

 メガバンク(大手都銀)にとって女性向けマーケットは小さいだろうが、当行にとっては大きい。女性向け住宅ローン「femistory」や、資格取得ローン「imadess」などの商品も拡大していく。女性が起業したり、マンションを買ったりという資金ニーズは20年前にはなかっただろうが、今ではニーズが確かにある。私は、なぜ銀行がこのニーズに対応しないのかという素朴な疑問から、新商品を作っていった。

---ネット専業銀行には再挑戦するのか。

 ネット専業銀行は、女性向け商品とともに西京銀行が独自性を発揮して社会から評価されるために不可欠だ。最近でも、KDDIが三菱東京UFJ銀行と組んでモバイルネット銀行参入を発表するなど、状況はどんどん動いている。西京銀行も、何カ月も時間をかけるわけにはいかない。夏ぐらいまでには具体化したい。

 場所の制約が少ないインターネット銀行は山口県でもできるという声もあるが、提携相手は東京に多い。東京本部が提携の窓口機能を担う。現在、数社から提携の申し出があり、検討を進めている。

 西京銀行は既に金融機能を持っているが、顧客はまだまだ地元に多い。山口県だけではネット銀行は成立しない。早期に顧客を確保するために、提携先はネット上などで顧客基盤を持つ企業が望ましい。

 ポータル事業を運営するライブドアも多くの顧客を持っていた。ただし、いくら顧客が多くても、「信頼」がなければ銀行として成り立たない。その観点も大事にしたい。

---新規事業に必要な人材をどう確保するのか。

 女性起業家支援ローンなどの新しい商品を展開するには、従来の融資審査基準に加えて、銀行員としての「目利き」能力が問われる。融資先の過去の業歴ではなく、起業する本人の思いや、参入する業界の知識などを見て融資の審査をする必要がある。

 そのためには、単に東京本部の人員を増やすだけではなく、人材の質が重要だ。一般に、銀行業は業務に必要な知識を身に付けさせる教育・研修はしてきたが、もっと幅広い意味で経験を積むための教育をしてこなかった。西京銀行では、10人近い若手行員を西京銀行の取引先ではない上場企業に「出向」させ、経験を積ませている。銀行業界外にも目を開き、「目利き」ができる人材を育てるための投資だと考えている。