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 与謝野馨氏は,「社会」という言葉を何度も繰り返した。ITproのインタビューと,日経BP社のセミナー自治体Linux最前線の基調講演でのことだ。

 企業や,特定の産業にとってではない。日本の,あるいは世界の社会にとって,ソフトウエアがどうあることが最も大きな利益をもたらすのか。間違いなく社会インフラとなったITは,常にそういった視点で問われ続けなければならない。政治家という職業であればなおのことだ。

 与謝野氏は「Windows系統のOSは使いやすく,Windowsの上で多くの便利なソフトが開発され,たいへんな社会的効用を持っている」とWindowsが果たした役割を高く評価する。

 しかし「ソースコードが非公開の外国製特定商用ソフトウエアに依存することは,」と与謝野氏は説く。現実的な代替手段ながないことは,システムとして脆弱であり,本質的なリスクを包えこむことになる。

 「社会」は必ずしも「日本の社会」を意味しない。「フリーのソフトウエアであるLinuxは,国際デジタル・ディバイドの解消にも貢献できる。国際的な観点からもオープンソースの振興が重要となる」(与謝野氏)。

 これらの観点から,選択肢としてオープンソース・ソフトウエアの振興が必然であると与謝野氏は語っている。

 特筆すべきは,その認識がITへの深い造詣の上に築かれていることだ。与謝野氏は自らパソコンを何題も組み立てるという。それだけでなく,自ら様々なLinuxディストリビューションをインストールするほどの知識を持つ。WindowsとLinuxの違の本質を正確に理解している。

 その与謝野氏が5月15日,Open Source Revolution!の基調講演に登壇する。経済財政政策・金融担当大臣として,金融機関や株式市場について日々タフな決断を迫られ続ける中で。多忙な中で与謝野氏が講演を受けた理由について思いをめぐらす。それは金融と株式の渦中にいたことで,ITの重要さと脆弱さを改めて痛感したからかもしれない。2年前,自由民主党「e-Japan重点計画特命委員会」の委員長として抱いた危機感が,現実に形となって吹き出していると感じているからかもしれない。

 システムが民営化スケジュールのくびきとなった郵政民営化や,度重なる証券取引所のトラブル。これらを政府・与党の責任者として見てきた与謝野氏。彼は今,何を語るのだろうか。

【自治体Linux最前線】「政府と自治体はオープンソース・ソフトウエアを積極的に利用すべき」---自民党政調会長 与謝野馨氏
「Linuxの振興を支援する」---自民党政調会長 衆議院議員 与謝野馨氏