NTTドコモの中村社長。「携帯電話機の需要は頭打ちになるが、若年層や法人など、開拓すべき市場はまだ残っている」
NTTドコモの中村社長。「携帯電話機の需要は頭打ちになるが、若年層や法人など、開拓すべき市場はまだ残っている」
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FOMAの比率はこの1年で24%から46%へ。2006年度中にムーバを追い抜くのが確実な情勢に
FOMAの比率はこの1年で24%から46%へ。2006年度中にムーバを追い抜くのが確実な情勢に
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2005年度のARPUは下げ止まり傾向に。2006年度はパケット定額制の利用拡大などで再び減少と予想
2005年度のARPUは下げ止まり傾向に。2006年度はパケット定額制の利用拡大などで再び減少と予想
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番号ポータビリティー制度開始による解約を防ぐ施策の1つとして、FOMAのつながりやすさを追求
番号ポータビリティー制度開始による解約を防ぐ施策の1つとして、FOMAのつながりやすさを追求
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HSDPAの概要。利用するには対応の携帯電話機とデータ通信カードが必要。エリア外では通常のFOMA網による通信となる
HSDPAの概要。利用するには対応の携帯電話機とデータ通信カードが必要。エリア外では通常のFOMA網による通信となる
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 NTTドコモは、2005年度(2005年4月~2006年3月)の連結業績を発表した。売上高は対前年度比2%減の4兆7659億円、営業利益は同6%増の8326億円、純利益は同18%減の6105億円。同社が2005年10月に発表した修正予想にほぼ沿う結果となった(発表資料)。

 同社設立以来初の減収減益となった前年度に続き、2005年度も減収となった。携帯電話機の販売台数減少に伴う収入減を、FOMAの通話料・パケット通信料の増収で補い切れなかった。一方、PHSサービス関連設備の減損処理が完了したことなどを受け、営業費用を同3%減少させた。営業外利益は、前年度に米AT&Tワイヤレスの株式売却益を5018億円計上していたため同76%の大幅減となった。

 併せて発表した2006年度の連結業績予想では、売上高が4兆8380億円(同2%増)、営業利益が8100億円(同3%減)、純利益が4880億円(同20%減)の増収減益としている。料金改定に伴う通話料・パケット通信料の収入減を契約数の増加で補う。一方でFOMA端末の販売台数増に伴う費用増や、FOMAの基地局増強に向けた設備投資を増やすため、営業利益は減少を見込んでいる。

ムーバからFOMAへの移行が順調、2006年度に逆転へ

 年度末(2006年3月末)時点での契約数は5114万契約。第3世代携帯電話サービス(3G)「FOMA」は、従来のPDC方式からの移行が順調に進み、2005年3月末の1150万契約から2346万契約へ倍増。同社の携帯電話契約数に占める比率が46%まで高まってきた。同社では2007年3月末の契約数を5290万契約と予想。うち3500万契約と、全体の2/3をFOMAが占めるとみている。

 携帯電話サービスの1契約当たりの月間平均収入(ARPU)は引き続き低下傾向にあるが、下げ幅は緩くなってきている。前年度の7200円に対し、2005年度は6910円となったが、2005年10月時点の予想(6850円)よりは若干上向いた。また、パケットARPUが1880円と、対前年度比で10円と小幅ながら上昇に転じた。「他社の高利用ユーザーが買い替えで当社に加入したことや、自社の高利用ユーザーを囲い込めたことなどが奏功した」(同社 代表取締役社長の中村維夫氏)。ただし、FOMA、ムーバそれぞれについてARPUを見ると、引き続き大幅な低下傾向にあることは変わりない。FOMAのARPUは8700円(前年度は9650円)、ムーバのARPUは5970円(同6800円)である。解約率は引き続き低い水準に抑えており、2005年度は0.77%と、前年度の1.01%よりさらに改善した。

子供向けやワンセグ対応端末が好調

 端末関連では、FOMA端末の低価格化が進んでいる。2005年2月に発売したFOMAの中位機「同 70xシリーズ」は順調に販売台数を伸ばしており、「高機能機『FOMA 90xシリーズ』と70xシリーズの販売比率は、おおむね65対35」(中村氏)という。同社はさらに、FOMAの低価格機「SIMPURE」の展開を始めており、2006年4月に発売した韓国LG電子製の「SIMPURE L」は、発売後10日間で1万台弱を販売した。

 このほか、子供向け端末「キッズケータイ FOMA SA800i」は、発売2カ月で12万台を売り上げ、しかもその9割が新規契約だったという。新規需要が頭打ちになりつつあるといわれる携帯電話機市場だが、2004年11月にツーカーが発売した高齢者向けの「ツーカーS」などと同様、まだ開拓の余地が残されていそうだ。

 また、携帯機器向け地上デジタル放送「ワンセグ」に対応した「FOMA P901iTV」が、「高価格であるにもかかわらず、当社の予想を上回り6万4000台売れた」(中村氏)といい、同社のテレビケータイに向けた今後の戦略に影響を与えそうだ。

HSDPAは2006年夏に開始、FOMAと同料金体系

 2006年度の設備投資は9050億円と、2005年度(8871億円)より増やす。「大半をFOMAの基地局増設に向ける」(中村氏)。現在2万4000基あるFOMAの屋外基地局を、2006年度末には3万4800基と「ムーバの基地局の2倍」(中村氏)という数まで増強することで、つながりにくい地域の解消を目指す。

 併せて、W-CDMAの高速データ通信規格であるHSDPA(wideband-CDMA with high speed downlink packet access)を2006年夏に始め、対応の携帯電話機やデータ通信カードを発売する。当初は東京23区からサービスを順次展開し、2006年度末には人口カバー率で70%程度まで広げる意向だ。HSDPAの理論上の最大通信速度は下り14.4Mビット/秒だが、同社では最大下り3.6Mビット/秒、上り384kビット/秒とする。ちなみに現行のFOMAによるデータ通信は、最大下り384kビット/秒、上り64kビット/秒である。料金体系は現行のFOMAの料金体系をそのまま適用する予定としている。

 同社が力を入れている電子マネーサービス「おサイフケータイ」関連では、2005年度末時点で対応端末の契約数が1180万契約、そのうち実際に利用しているユーザーは3割程度となっている。2006年度末には、対応端末を1800万契約まで増やす一方、クレジット決済システム「iD」の店舗用リーダー/ライターを15万台設置することを目指す。同社が自ら展開するクレジット事業「DCMX」については、「短期的な目標は立てていないが、長期的にみて今後3~5年程度で1000万契約を目指していきたい」(中村氏)としている。