写真1 「『やろう』という掛け声に終わらず、『やるための手段』を提案できる力を育成したい」と話す春名敏弘ポーラ販売社長
写真1 「『やろう』という掛け声に終わらず、『やるための手段』を提案できる力を育成したい」と話す春名敏弘ポーラ販売社長
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写真2 ポーラ販売神奈川エリアマネージャーの西原妙子氏は、「上からの押し付けでなく、FCが自分で『気づく』ので長続きする」と話す
写真2 ポーラ販売神奈川エリアマネージャーの西原妙子氏は、「上からの押し付けでなく、FCが自分で『気づく』ので長続きする」と話す
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 化粧品訪問販売最大手、ポーラ化粧品本舗の販売会社であるポーラ販売(東京・品川)が、営業改革プロジェクトの全社展開を始めた。営業所の経営支援に当たるフィールドカウンセラー(FC)の業務プロセスを見直し、営業所支援の能力を強化する狙い。

 同社は「ポーラレディ」と呼ばれる営業担当者を通じて顧客に商品を販売し、1980年代前半に2000億円の売上高を誇った。しかし、主婦の在宅率低下などの影響を受けて売り上げは漸減し、2004年12月のグループ売り上げ実績は約1780億円にとどまった。

 そこで営業力の向上を図るため、2004年にはFC制度を導入。全国を32のエリアに分け、エリアマネージャーとFCを配置した。ポーラレディを抱える全国4900の営業所に対し、経営支援や営業指導を行う体制を整備した。しかし、「従来の業務は、営業所に対する目標設定や、販売金額に応じたインセンティブの提供などにとどまり、『どうすれば目標を達成できるのか』に踏み込んだ具体的な業務改善案の提案ができていなかった」(春名敏弘社長,写真1)。

 そこで2005年3月から、コンサルティング会社プラウドフットジャパン(東京・千代田)の支援を受け、営業プロセス改革に取り組んでいる。同社の指導の下、「インストーラー」と呼ばれる社内コンサルタントを育成し、プロセス改革に必要とされる理論やノウハウを習得する。インストーラーはエリアマネージャーと一緒に、各エリアの業務プロセス分析や改善案の抽出を行い、エリアマネージャーがFCの活動を指導する。

 2005年3月から6月にかけてまず神奈川エリアで改革を実施し、9人のFCの営業活動を見直した。インストーラーは具体的な改善案を提案するのではなく、エリアマネージャーやFCが自ら改善すべき点に「気づく」ように支援する。エリアマネージャーに業務分析手法を教えたり、業務の流れを説明させる過程で、問題点を抽出するよう促す。

 神奈川エリアマネージャーの西原妙子氏(写真2)はインストーラーとの話し合いをベースに、FCが営業店に対して行う業務のチェックリストを作成し、予定通りの行動ができているかどうかチェックすることにした。例えば、「新商品のフェアを行う」「営業担当者向けの勉強会を実施する」というイベントの予定を立てるだけでなく、各イベントの集客目標設定や集客のためのダイレクトメール(DM)配布、広告制作などの具体的な行動スケジュールまでリストに盛り込み、行動の細部までチェックできるようにした。予定通りに進まなかった場合の代替案の作成も徹底した。

 これらの活動によって、プロセス改革の対象となった営業所では他の営業所に比べ、売り上げで8.2%上回る結果となった。10%を超える成果を出した営業所もあった。西原マネージャーは、「これまでは営業店が目標を達成できなくても『来月はがんばりましょう』と言うくらいしかできなかったが、プロセス改革後はチェックリストと照らし合わせて漏れを発見したり、翌月に取り組む新しい課題をピックアップしたりできるようになった」と話す。

 神奈川エリアでの実績を受けて2005年7月から東京の5エリアでもプロセス改革を実施。2006年1月から7月にかけて残りの27エリアに拡大していく。課長級の社員8人が専任インストーラーとして各エリアの指導に当たる。