「NPO DAY」で聴衆に語りかけるビル・ゲイツ氏
「NPO DAY」で聴衆に語りかけるビル・ゲイツ氏
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参加者と記念撮影。野田聖子衆議院議員の姿もあった
参加者と記念撮影。野田聖子衆議院議員の姿もあった
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NPO-Jの内容。複数の支援策を段階的に用意する
NPO-Jの内容。複数の支援策を段階的に用意する
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 マイクロソフトは2006年4月21日、NPOなどの市民活動団体を金銭的/技術的に支援する取り組みを拡大し、新たに「NPO-J」という名称の支援策を開始すると発表した。NPO活動における情報格差(デジタルデバイド)解消を狙ったものだ。同日、NPOを対象としたイベント「NPO DAY」を開催。来日中のビル・ゲイツ米マイクロソフト会長が講演を行った。「ITによってNPO活動は劇的に変わる」とITのメリットを述べるとともに、デジタルデバイド解消の重要性を強調した。

 ITがNPO活動にもたらすメリットとしてゲイツ氏が主に指摘したのは、コラボレーションが容易になること。例えばNPO活動の情報をWebページで発信すれば、多くの支援者が集まる。また同じ問題に取り組む団体同士の交流も深まる。このように「自分たちの“ストーリー”を世の中に語ることは、活動を拡大するうえで非常に大切だ」(ゲイツ氏)。また、ITによって、NPOの支援を必要としている人々同士のコラボレーションも促進できる。2005年のハリケーン被害の際、同社も赤十字と協力してソフトウエア面での支援を実施した。例えば避難している人たちの情報をWebサイトに登録しておくことで、身内の所在を容易に確認できるようになるといった効果があったという。

 もう1つゲイツ氏が「個人的に強い情熱を感じている」と主張したのは、デジタルデバイドの解消。NPO活動による支援を必要とする人たちには、高齢者や障害を持つ人が少なくない。彼らにとって、現在のITは使いやすいものとは言えない。「一昔前に識字率の向上が重要なテーマだったように、現在はITを誰もが容易に使えるようにすべき」(ゲイツ氏)。その解決手段として、音声認識やWebページの読み上げ技術などが今後活躍するだろうと述べた。

 講演の終わりには、NPOの主宰者がゲイツ氏に質問を投げかける一幕もあった。「企業などからなかなか金銭的な支援が得られない。どうしたらよいか」という問いに対しては「若いうちに、“人に与える”ことの価値を教えるべきだ」と回答。「富を得た人の中には、それを政府に回す人もいれば、自分の子どもに残す人もいる。そのどちらも、何らかのひずみの原因になる。得た富は社会に還元すべきだ」(ゲイツ氏)。フルタイムでの勤務を退いたら、社会貢献活動に時間を費やすつもりであることも明らかにした。

 マイクロソフトのNPO-Jは、大きく四つの要素から成る。(1)基礎的なITスキルをオンラインで習得できる「デジタルリテラシーカリキュラム」の提供、(2)IT活用を啓発するためのイベント「NPO Day」の開催、(3)NPOのニーズに合わせたソフトウエアの開発とそれを提供する「NPOパートナーシッププログラム」、(4)助成金を支給する「マイクロソフトNPO支援プログラム」である。同社はこれまでも(4)の取り組みを実施していたが「単に金銭的な援助をするだけではダメだということを、これまでの活動を通じて思い知った。技術面などさまざまな支援を継続して行うことが重要だ」(同社の緒方麻弓子社会貢献部部長)。そこで今回、大幅に支援内容を拡張した。