GyaO事業の現状について力説する,USENの宇野康秀代表取締役社長
GyaO事業の現状について力説する,USENの宇野康秀代表取締役社長
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 USENは4月21日,2005年9月1日から2006年2月28日までの業績である2006年度2月中間期連結決算を発表した。連結の売上高は815億8300万円と対前年度同期比15.2%増の増収を達成。しかし営業利益は,当初予想を約30億円下回る4億1500万円にとどまり,同90.8%減の大幅減益となった。無料動画サービス「GyaO」などを提供する映像・コンテンツ事業部門が49億300万円の赤字となり足を引っ張った。

 同社の宇野康秀社長(写真)は「GyaO事業は将来性がある。登録加入者数は約900万人に達しつつあり,動画サービスの中で圧倒的No.1の地位を獲得している。ライバルも続々と登場している中で,投資に十分値する財産を築けた」と,戦略的な赤字であることを強調した。

 なお最終損益は,関連会社の株式を一部売却することなどで利益を捻出し,3億8700万円の黒字とした。またブロードバンド・通信事業を,当初の計画よりも早い今期中もしくは来期中に黒字化させることで,今後も連結業績の安定につなげたい考え。それによって,引き続きGyaO事業に対して戦略的に投資していく方針も示した。

 決算説明会の席上で宇野社長は,ほとんどの時間を使ってGyaO事業について力説した。営業利益が当初予想の30億円を下回ったことについて,「GyaOの広告獲得の遅れが出たことが一つの要因」(宇野社長)とした。

 GyaOは,大手企業を中心に約250社の広告出稿の実績があるという。しかし受注してから売り上げに計上できるまで,実際は3カ月ほどズレが生じている。その期間を見誤ったことが,今回の予想の下回りにつながったとした。なお次の四半期では,既に約11億円の広告受注が見えているという。

 当初予測を下回ったもう一つの要因として,番組のコンテンツ制作費が予想以上に増えた点も挙げた。GyaOでは自主制作番組を一定比率で作る計画だったが,権利処理の問題があるために,当初はスムーズに進まないと見込んでいた。「しかし芸能プロダクションや番組制作会社の理解が浸透し,予想以上に順調に進んだ」(宇野社長)。そのためコンテンツ制作費がかさんだという。

 宇野社長は「既にGyaOの番組ジャンルは十分そろった。これからは番組をもっと見てもらう工夫をする段階」と語り,コンテンツ制作費がこれ以上増えないことを強調した。宇野社長は「ほぼ時間の問題でGyaOは収益ビジネスになる」と力説したが,黒字化の時期については明言を避けた。

 なお6月をメドにGyaOに地域別のセグメント広告を導入する計画や,セットトップ・ボックスを用意していることも今回初めて明らかにした。