松下が発売するBlu-ray Discドライブ
松下が発売するBlu-ray Discドライブ
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発表会場ではデスクトップパソコンを使ったBDコンテンツの再生デモを実施していた。1080i、MPEG-2形式の映像を3.2GHz動作のPentium DとGeForce 7800GTで復号化。CPU使用率は4割程度であった
発表会場ではデスクトップパソコンを使ったBDコンテンツの再生デモを実施していた。1080i、MPEG-2形式の映像を3.2GHz動作のPentium DとGeForce 7800GTで復号化。CPU使用率は4割程度であった
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開発中のBlu-ray Discプレーヤーと、BD Javaによる対話型インタフェースのデモも披露
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スリム型Blu-ray Discドライブを組み込んだノートパソコン「TOUGHBOOK」の試作機
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「BD陣営は、デジタル家電市場の大半を握っている」(松下の津賀氏)
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ドライブに併せて、記録型Blu-ray Disc4品種を発売する
ドライブに併せて、記録型Blu-ray Disc4品種を発売する
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 松下電器産業は2006年4月21日、デスクトップパソコン内蔵用のBlu-ray Disc(BD)ドライブ「LF-MB121JD」を2006年6月10日に発売すると発表した。価格はオープンで、実勢価格は10万円前後の見込み(同製品の発表資料)。パソコンメーカーへ向けたBDドライブの量産出荷と、BD対応ディスクの市販も始める。同社はLF-MB121JDだけで月産1万台と強気の出荷計画を打ち出すものの、BD規格の映像ソフトの再生などに課題が残ることも浮き彫りになった。またAV機器としてのBDプレーヤーの国内出荷についても、製品発表の記者会見の冒頭に同社役員が「検討中で詳細は一切未定」と断りを入れるなど、慎重な姿勢を見せている。

■片面2層のBD-R/REの読み書きが可能、BD-ROMは当面非対応

 LF-MB121JDはデスクトップパソコンの5インチベイに内蔵する、いわゆるハーフハイト型のドライブで、松下電器産業グループのパナソニック四国エレクトロニクス製。追記型のBD-Rと書き換え型のBD-REに対応し、2倍速(標準速は4.5MB/秒)で記録/再生が可能。容量25GBの片面1層BD媒体に加え、同50GBの片面2層BD媒体の読み書きも可能。このほか、2層DVD±Rを含むDVD、CDの各媒体の読み書きができる。インタフェースはATAPI。同製品の動作に必要なパソコンの最小スペックは、CPUがPentium III(700MHz)、メモリーが128MB、内蔵HDD容量が10GB、ディスプレイが6万5000色表示のXGAとなっている。

 BD対応の添付ソフトウエアとして、データバックアップソフト「PowerBackup 2」、ディスク書き込みソフト「Power2Go 5」を用意する。BDには非対応だが、DVD作成・編集ソフト「PowerProducer 3」と「DVD-MovieAlbumSE 4.1」、DVD映像の再生ソフト「PowerDVD 6」、パケット書き込みソフト「InstantBurn 5」を添付する。

■映像ソフトの鑑賞には高い壁

 LF-MB121JDはパソコン用の記録装置として一通りの機能は備えている。しかし、BDの最大の特徴ともいえる高画質の映像コンテンツの再生は、実質的に厳しそうだ。同製品は、ハードウエアの仕様上は、再生専用のBD-ROMの読み出しにも対応している。しかし、BD-ROMの再生用ソフトウエアの開発が間に合わず、初期出荷段階では製品に添付していない。同社では今後、同製品の購入ユーザーに対しソフトウエアのアップグレードなどを実施する予定としているが、詳細は現段階では未定という。

 ソフトウエアの問題に加え、同製品を搭載するパソコン側の性能も問題となる。発表会の会場では、同製品を内蔵したパソコンでHDTV画質の映像ソフトを再生するデモを実施していたが、Pentium D(3.2GHz)のCPUに加え、米エヌビディアのグラフィックスチップ「GeForce 7800 GT」を備えたパソコンを使用していた。デモを担当したサイバーリンクの説明員によると、「符号化方式にMPEG-2を用い、ハイビジョン画質(1080i)で収録されたBDの映像ソフトを再生するには、Pentium 4(3GHz)程度の性能を持つCPUが必要になる。MPEG-2よりデータの圧縮効率が高いH.264/MPEG-4 AVC(H.264)で符号化された映像ソフトの場合は、さらに高い性能が必要で、今回のデモで使用したような性能のパソコンが必須になるだろう」という。また、BDの映像ソフトをHDTV画質で再生する場合、パソコン本体とディスプレイの接続には、著作権保護方式のHDCPに対応したDVIやHDMIのインタフェースが必要となる。

■「AV機器もハリウッドも、大半はBD陣営が握っている」

 発表会であいさつに立った松下電器産業 デジタルネットワーク・ソフトウェア技術担当役員の津賀一宏氏は、今回の製品について「松下ではBDの開発に5年以上注力してきた。2004年に(民生用AV機器の)BDレコーダーを発売したことはあるが、本格的な商品化という意味では今回の製品が大きな節目となる」と語り、BDドライブ発表の意義を強調した。

 「現在のパソコン用DVDドライブ市場における松下のシェアは18%。(パソコン向けドライブとディスクをいち早く市場に投入することで)BDドライブでも20%のシェア獲得を目標にしていく」(同社 パナソニックマーケティング本部 PCDグループ グループマネージャーの原昭一郎氏)。BD-RやBD-REといった記録用ディスクの用途としてはBDレコーダー向けよりパソコン向けの方が大きくなるとの予測も披露した。

 次世代光ディスクで競合するHD DVDに対しては、「ハイビジョン画質の薄型テレビメーカーのうち、BD陣営のシェアは60%。現行のDVDレコーダーでも、市場シェアで56%相当分のメーカーがBD陣営だ。ハリウッドの映像ソフトも49.1%はBDでしか観られない」(津賀氏)などと優位性をアピール。東芝がHD DVDプレーヤーの量産出荷を2006年3月に始めたこと(関連記事)についても、「すべては想定の範囲内」(津賀氏)と余裕の表情を見せた。

 一方で、BDの弱点といわれる2層ディスクの歩留まりについては「今は鋭意がんばっている」(同社 パナソニックAVCネットワークス社 デバイス事業グループ カテゴリーオーナーの宝来慶一郎氏)とだけ述べ、具体的な数字については言及を避けた。出荷当初は月産5万枚のうち1/4程度が2層ディスクとなる見込み。また、ディスクの製造コストの高さについては「事実ではあるが、スピンコート技術の改良によりディスクの膜厚のバラつきを軽減するなど、量産体制を整えている」(津賀氏)とした。なお、同社製BDディスクの予想実勢価格は、BD-Rの1層(25GB)品が1800円、2層(50GB)品が4300円。BD-REの1層品が2500円、2層品が6000円(BDディスクの発表資料)。

 AV機器としてのBDプレーヤーやBDレコーダーの事業については、「米国では9月に1500ドルで出荷する。映像ソフトも、米国では2006年中に85タイトルを発売する」(津賀氏)とだけ語り、国内での事業展開については口を閉ざした。また、韓国LG電子がBDとHD DVDの両方に対応するプレーヤーの開発を進めており、次世代光ディスクをめぐる規格争いが無意味になるのではないかとの質問に対しては、「当社もユーザーの動向を見ながら検討していく」(パナソニック四国エレクトロニクス デバイスインダストリー事業グループ ストレージプロダクツビジネスユニット ビジネスユニット長の中矢一也氏)とだけ述べた。

■パソコンメーカーへの供給も開始

 同社は自社ブランドで販売するLF-MB121JDのほか、パソコンメーカーなどへの量産出荷も始める(メーカー向け出荷の発表資料)。LF-MB121JDと同様のハーフハイト品のほか、主にノートパソコンへ向けた厚さ12.7mmのスリム型2品種を用意する。富士通が松下製BDドライブを採用したデスクトップパソコンを発売する(関連記事)ほか、アイ・オー・データ機器が6月上旬に発売すると発表している(アイ・オー・データ機器の発表資料)。