官・民の有志が集まり新しい公会計のあり方を検討する「より良き公会計のための勉強会(仮)」(※)(の第2回会合が、2006年4月20日に東京・霞ヶ関ビル内の東海大学交友会館で開催された。

※ その後正式名称は「自立・自治の公会計改革研究会」と決定。

 まず総務省で2006年4月に発足した「新地方公会計制度研究会」の事務局を務める同省自治財政局財務調査課長の青木信之課長が、行革を進めていく上で、地方自治体には債務、資産の洗い直しと歳出の改革が必要であると述べ、そのためのツールとしての公会計改革の重要性を強調した。

 続いて今回の講師であるABM(本社・東京)のシニアコンサルタントで公認会計士の菅原正明氏が、が公会計による自治体評価のあり方に関する講演を行った。菅原氏は、企業の財務分析では「安全性」「収益性」「成長性」が重要視されるが、自治体の場合には「安全性」「効率性」「公平性」が重要な指標であると述べ、それらを表す指標の具体案を挙げた。

 例えば、「安全性」では道路など売却不可能な資産を除く実質資産と負債の割合や、人口一人あたり公債額など、「効率性」ではサービス費用の何パーセントを受益者が負担しているか、減価償却費と公債費の比率(硬直化比率)など、「公平性」では資産と負債の差額の変化を世代間の費用負担の先送りであると見て、現時点の受益額と現時点の負担コストの比率などが重要なポイントになるとした。

 その上で、3つの自治体の財務諸表を元にこれらの指標で実際に分析したところ、自治体によっては財務が健全なところもあれば、債務超過に近いところまで三者三様だった。「自治体の財政が厳しいと一般に言われているが、実際に分析すると財政状況の健全な自治体もある」という菅原氏の分析結果を受け、勉強会では「このような客観的な指標は将来、市場で地方債を独自に発行する場合の、投資家に対する正確な情報提供の材料になる」「住民や議会に対する説明材料、また政策判断をより明確にするための手がかりにつながる」といった意見が出された。

 また、菅原氏は自治体の資産の約9割近くが固定資産であることから、自治体の既存の会計システムに固定資産管理システムを付加すれば、従来の現金主義の会計だけでなく、発生主義による財務諸表を簡単に作成できるとした。固定資産管理システムについては、小都市ならば民間企業向けの市販のパッケージソフトを導入するだけでも問題はないと菅原氏は付け加えた。

 「より良き公会計のための勉強会(仮)」(現・「自立・自治の公会計改革研究会」)は、NPO地域活性化研究所代表の川島正英氏と、ウッドランド代表取締役会長の淺田隆治氏が幹事を務め、全国10自治体(川崎市、北九州市、三重県桑名市、京都市、岐阜市、高知市、新潟県上越市、東京都世田谷区、埼玉県草加市、東京都三鷹市)の財務責任者・担当者が参加する任意団体。(塗谷隆弘)