ビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクト
ビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクト
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マイクロソフト日本法人は20周年
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ソフトウエアやパートナーシップの重要性を強調
ソフトウエアやパートナーシップの重要性を強調
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 「イノベーションの鍵はソフトウエアにある」--。マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウェアアーキテクトは2006年4月21日、マイクロソフト日本法人の設立20周年を記念した記者会見を開催した。この20年の間、人々の仕事や生活がいかに変化したかを振り返りつつ、そこにソフトウエアが果たしてきた役割の大きさを強調した。そして「マイクロソフトの成功は、ずっとソフトウエアに特化して事業を進めてきたことによってもたらされた」と述べた。

 「マイクロソフトは幸運だった。なぜならソフトウエアによって、世界を構築することができたからだ」。ゲイツ氏はこのような言葉で、同社の歴史を振り返った。パソコンは言うに及ばず、電話やゲーム、ナビゲーションシステムなどさまざまなデバイスが飛躍的進化を遂げ、人々の仕事、生活、教育、遊びに大きな変化をもたらしている。その裏には常に、ソフトウエアの存在があった。ゲイツ氏はこれを「ソフトウエア駆動型」の進化であったと表現した。

 これからもソフトウエアは、革新をもたらす鍵となるという。プラットフォームとなるのはインターネットだ。「ソフトウエアはもはや、箱を買ってきてインストールする、というだけのものではなくなっている。」(ゲイツ氏)。同社はこのところ、「Windows Live」「Office Live」といったインターネットサービスを次々と展開している。ここに最先端のフィーチャーがあると考えており、大きな投資を続けていくという。現在ブームとなっている「Web 2.0」というキーワードについても「言葉自体はあいまいだが、Webサービスが重要な構成要素であることは確か。Webサービスはまさに、ソフトウエアそのもの」と述べ、ソフトウエアこそが今後のイノベーションの核にあることを何度も強調した。

 マイクロソフトは、創業以来一貫してソフトウエアを手がけてきた企業。「IBMはハードもソフトもソリューションもすべてやっているが、我々はソフトだけに注力してきた。各企業は、自分が得意な分野に特化すべきだ。専門分野以外は、さまざまなパートナーと協力すればよい。マイクロソフトが成功した理由は、ここにある」(ゲイツ氏)。

 このように、講演の中でゲイツ氏はパートナーとの連携の重要性を何度も強調した。日本でアスキーのメンバーとビジネスを開始し、NECの「PC-8000」シリーズへのソフト供給をはじめ「マイクロソフトは、日本のさまざまな企業と協力して事業を進めてきた」(ゲイツ氏)。こうしたパートナーシップは、今後もますます拡大していくという。現在マイクロソフト日本法人が進める「Plan-J」計画もその一つ。パートナーと協力しながら研究開発に投資し、新たな技術を生み出していく考えだ。昨夜も日本に到着したあと、東京大学などと共同研究を進めている新技術のデモを見たというゲイツ氏は「ペン入力の文字認識、音声認識、メンバー間の容易なコラボレーションなど、研究開発者が何十年も取り組んできたことがようやく現実になりつつある」と説明。こうした新しいインタフェースを生み出すことで、新しいワークスタイルを実現したいという意気込みを見せた。さらに、高齢者や障害を持つ人なども容易にソフトウエアを利用できるための取り組みも強化する予定。これに関してもパートナーとの協力関係が欠かせないという。

 研究開発に関する大規模な投資は、引き続き行う。現在マイクロソフトは年間60億ドル以上を研究開発に投資している。なかでも1/3の予算を割いているのがセキュリティだ。セキュリティに関する投資は、目立つ成果となって現れることは少ないが「人々がセキュリティについて心配しなくてもよい世界になることが、目指すべきゴール。ユーザーが特別に何かをしなくても、安全性を確保すべきだ」(ゲイツ氏)とセキュリティの重要性を強調した。既にその成果として、修正ファイルを自動的にダウンロードしたり、安全を確認できないソフトウエアの実行をブロックするといった仕組みを提供している。ただこれでもまだまだやるべきことはあるとし、セキュリティに対して引き続き注力するつもりであることを述べた。