国分など食品卸大手連合が設立したジャパン・インフォレックスの井口泰夫社長
国分など食品卸大手連合が設立したジャパン・インフォレックスの井口泰夫社長
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 国分、菱食、日本アクセスなど酒類・食品卸業界の大手10社は2006年7月から、商品情報データベースを共通化する取り組みを始める。10社の売上高の単純合計は約6兆円で、酒類・食品卸市場全体(約16兆円)の4割程度を占める。

 ほかの食品卸にも参加を呼びかけており、新データベースは事実上の業界標準になるとみられる。流通業界全体のサプライチェーン管理(SCM)の前提となる商品情報整備によって、卸主導の流通効率化を目指す。

 国分、菱食、日本アクセスは4月10日に、共通化のための新会社ジャパン・インフォレックス(東京・中央)を設立した。3社が共同出資し、菱食の後藤雅治社長が新会社の会長(非常勤)に、国分のCIO(最高情報責任者)を務めてきた井口泰夫・執行役員が新会社の社長に就任する。

 新会社は、商品ごとに名称や、商品画像、重量、カロリー表示、内箱や外箱の寸法、原材料アレルギー情報など約120項目の情報を食品メーカーから入手。これをデータベースに入力して商品マスターとして登録し、約200万アイテム分の商品情報を電子データで卸各社に提供する。

 もともと、国分と日本アクセスの2社はジェフネット(東京・中央)を共同で設立し、商品情報データベースを共通化していた。今回、新たに菱食など8社が参加。ジェフネットの業務は新会社に移管される。

 食品は新商品が次々と発売され、商品の種類が多い。従来は、卸各社が食品メーカーからそれぞれ紙やデータで商品情報を入手し、自社の独自形式の商品情報データベースに入力していた。この業務のために、卸各社がそれぞれ数十人の要員を抱えていた。

 新会社はこれを請け負うとともに、卸各社でデータ形式を共通化する。卸各社は商品の基本情報を共有するが、仕入れ価格や販売価格、販促手法といった競争にかかわる独自情報については、自社の情報のみ閲覧できるようにする。卸各社は新会社を利用することによって、1社当たり年間5000万円程度のコスト削減につながる。

 少子高齢化によって酒類や食品の消費が頭打ちになるなかで、卸各社は業務の効率化を急いでいる。公開情報である商品情報自体が卸の競争力を左右するわけではないが、卸の情報化の進展によって、「正確な商品情報は付加価値を生む。棚割りの検討など卸のすべての業務で正確な商品情報がベースになる」(井口社長)という。従来は、商品情報の間違いにより、商品出荷後に伝票を修正するなど、手戻りが発生することも多かった。

 欧米では、メーカー・卸・小売りが標準規格に基づいて1つの商品情報を共有する「GDS(Global Data Synchronization:商品情報の同期化)」の取り組みが進んでいる。日本でも経済産業省が2005年12月からGDSの実証実験をしており、小売りではイオンやイトーヨーカ堂など、卸では国分や菱食などが参加している。新会社は、将来的にGDSへの対応を視野に入れるが、「卸・小売り間の共有の前に、まず、卸業界内で商品情報の整理・共有を進める必要がある」(井口社長)という。