写真1 要望書を手渡した孫正義ソフトバンク社長(左側の真ん中)や小野寺正KDDI社長(左側手前)などと,要望書を受け取った竹中平蔵総務大臣(右側)
写真1 要望書を手渡した孫正義ソフトバンク社長(左側の真ん中)や小野寺正KDDI社長(左側手前)などと,要望書を受け取った竹中平蔵総務大臣(右側)
[画像のクリックで拡大表示]
写真2 記者団に囲まれ,質問に答えるソフトバンクの孫正義社長
写真2 記者団に囲まれ,質問に答えるソフトバンクの孫正義社長
[画像のクリックで拡大表示]

 KDDIやソフトバンクなど10社は4月19日,IPマルチキャスト放送における著作権の位置付け見直しを目指す「役務利用放送協議会」の設立を発表。さらに同日夕刻,役務利用放送協議会は竹中平蔵総務大臣に要望書を提出した。要望書は,「有線役務利用放送を著作権法上の放送に位置付けられるよう本年内に措置すること」という内容。陳情には,ソフトバンクの孫正義社長やKDDIの小野寺正社長などが顔をそろえ,要望書を直接,竹中大臣に手渡した(写真1)。

 役務利用放送協議会は,KDDIとソフトバンクのほか,NTT東西地域会社,アイキャスト,オン・デマンド・ティービー,オンラインティーヴィ,クラビット,ビー・ビー・ケーブル,ぷららネットワークスが参加。IPマルチキャスト放送によるコンテンツ流通促進に向けた著作権処理のシステム作りが狙い。主な活動内容は,(1)有線役務利用放送の著作権法の位置付けの見直しに向けた関連省庁との調整,(2)日本音楽著作権協会など権利団体との権利処理ルールの策定,(3)放送事業者とのIPマルチキャストを使った再送信の技術や運用基準の調整——の三点となっている。

 陳情後,記者団に囲まれたソフトバンクの孫社長は,「韓国のドラマはインターネットでどんどん流れているのに,日本のテレビ・ドラマは著作権の問題があって流せない。日本では著作権の議論が遅れているので,そういう議論を促進させたい」と意気込みを述べた。また,「今のアナログ放送は,2011年に見られなくなるということを理解している国民は少ないと思う。テレビが見られなくなる世帯が何百万も出ては困るし,その解決にはIP再送信を使いインターネットでテレビを見られる救済の手立てを用意しておかないといけない。あと5~6年しかないので,今から準備しないと間に合わない」などとコメントした(写真2)。

 竹中総務大臣が主催する私的懇談会「通信と放送の在り方に関する懇談会」は明日の4月20日,第10回会合を開催する。第10回会合では主に通信分野の議論を総括する予定だが,IPマルチキャストの著作権法上の取り扱いについても議論することになっている。役務利用放送協議会は,今回の陳情をあえて懇談会の前日に設定することで,竹中大臣へのアピール効果を狙ったものと見られる。