Bluetooth SIGのアジア太平洋・日本担当マーケティング・ディレクターのエリック・シュナイダー氏
Bluetooth SIGのアジア太平洋・日本担当マーケティング・ディレクターのエリック・シュナイダー氏
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さまざまな規格団体と協力して、より便利に無線を利用できる環境を模索していく
さまざまな規格団体と協力して、より便利に無線を利用できる環境を模索していく
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 パソコン、携帯電話、音楽プレーヤーなどで使われている通信方式「Bluetooth」の標準化をしているBluetooth Special Interest Groupは2006年3月29日、WiMedia AllianceのUWB(Ultra Wide Band)技術をBluetooth規格に取り込むと発表した。WiMedia Allianceは480Mbps以上の通信速度を目指している標準化団体。BluetoothがこのUWB方式を採用することで、従来は1Mbps程度だった通信速度が急激に向上することになる。Bluetooth SIGのアジア太平洋・日本担当マーケティング・ディレクターのエリック・シュナイダー氏にUWB対応の経緯と今後の取り組みについて聞いた。

■なぜBluetoothの通信速度を上げるのか。

 現在のBluetoothでもデータを送信できるが、新しい用途や環境に対応する必要がある。例えば、デジカメで撮影した100万画素程度の画像をプリンターに送るといった用途では数秒待てば送信できるが、700万画素のデータを送信するには現状のBluetoothではかなり時間がかかってしまう。今後は動画データを送信するような用途も増えると考えられ、さらなる通信速度が必要となる。ただ、現状では、実際の通信速度は未定だ。WiMediaの規格では480Mbpsとなっているが、機器に実装する上で、消費電力との関係から通信速度を下げる可能性もある。

■動画データの送信など無線LANと用途が競合する部分があるのでは。

 無線LANとBluetoothで利点が異なる。無線LANはあくまでも、有線LANを置き換えたもので、固定されたネットワークのための方式。Bluetoothは機器同士で簡単に1対1で簡単に通信できる。例えば、Bluetooth対応機器同士であれば、携帯電話で撮った写真を家庭用のテレビに転送するといった使い方が、パソコンを介さずに簡単にできる。

 UWBを使った規格で「Wireless USB」という方式もあるが、こちらもパソコンと周辺機器をつなぐケーブルを置き換えたもので競合しないと考えている。

■これまでは電波による通信方式(物理層)ではBluetooth独自の方式を使ってきたが、方針を変えるのか。

 確かに、物理層の方式は外部のグループが定めたものとなるが、Bluetoothの特徴が失われるわけではない。Bluetoothではさまざまな用途(アプリケーション)に対する複数のプロファイルを用意している。例えば、デジカメとプリンターを接続するためには写真の検索や閲覧の方法を定めている。ほかにもヘッドフォンを接続するためのプロファイルなど26種類があり、こうした用途に合わせて最適化できる点は、ほかの通信方式にはない特徴だ。

 無線通信には、UWBのほかにも、ZigBeeやNFC(Near Field Communication)といった方式もある。現状で、UWB以外の方式をBluetooth規格に取り込む予定はないが、これらの通信方式を定める団体と協力し、さまざまな用途で無線通信を快適にできるような方法を模索していく。

■UWB対応に向けたスケジュールは。

 2007年の第1四半期には仕様を策定する。試作品が第3四半期に登場するだろう。実際の製品が登場するのは2008年の中ごろと見ている。仕様を策定する作業はスムーズに進んでいる。UWBにはWiMedia AllianceのMB-OFDM方式のほか、DS-UWBという方式もあった。MB-OFDMを選んだ理由は、Bluetooth SIG内で既にMB-OFDMに取り組んでいる企業が多く、支援が得られると考えたからだ。現在では、東芝やノキアなどがBluetooth SIG内で積極的に策定作業を進めている。

■IEEEでUWBの標準方式を議論していた部会が解散となったが、懸念材料となるか。

 懸念はない。IEEEの存在は確かに重要だが、Bluetooth SIGでは独自にBluetoothの仕様を定め、今では数多くの製品が出荷されている。IEEEの力を借りずに成功できた例といえる。必ずしも、IEEEの標準方式は必要ではない。ほかに、各国でUWBに使える周波数帯域が異なるという問題もあるが、WiMediaが各国当局と交渉を進めており、いずれ解決されるだろう。