新しく投入されるQシリーズの「Q8220」
新しく投入されるQシリーズの「Q8220」
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最薄部で18.2mm、重さは985g
最薄部で18.2mm、重さは985g
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左上にフレームにマグネシウム合金を採用した厚さ5mmのファンを配置
左上にフレームにマグネシウム合金を採用した厚さ5mmのファンを配置
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天板の裏面。どれくらいの深さのくりぬきでどれくらいの重さが減るかを実験
天板の裏面。どれくらいの深さのくりぬきでどれくらいの重さが減るかを実験
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ヨーロッパで発表されたQシリーズはバッテリーを外すとSIMカードの挿入口がある
ヨーロッパで発表されたQシリーズはバッテリーを外すとSIMカードの挿入口がある
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「Q8220」の開発チーム。手前右が五十嵐一浩本部長代理
「Q8220」の開発チーム。手前右が五十嵐一浩本部長代理
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 富士通は2006年4月13日、企業向けのノート「FMV-LIFEBOOK」シリーズの新モデルを発表。「ウルトラライト&スリム・モバイル」と称した新しい「Qシリーズ」を投入した。Qシリーズ第1弾の「Q8220」は12.1型横長液晶を搭載し、重さ985g、厚さが最薄部で18.2mm。この軽量薄型ノートを開発した、パーソナルビジネス本部の五十嵐一浩本部長代理をはじめとする富士通の開発チームに話を聞いた。

■「Q8220」の開発背景は。

 最近、モバイルノート分野では目新しいものが出てこず、「少し停滞しているのではないか」という気持ちがあった。薄くて軽い、それでいて堅ろう性を保持したノートはできないか、とヨーロッパの富士通・シーメンス・コンピューターズも含めてアイディアを出し合った。ビジネス用のノートを考えたとき、かばんに入れるのは大前提。重さはもちろん、今までのモバイルノートよりも薄く、かつ、フラットな天板を採用する必要がある、と考えた。

■堅ろう性を保持するための工夫は。

 我々は堅ろう性を考えたときに2つの方向性があると考えている。ひとつは「がちがち」に固めて、いかに加重に負けないか、を追求する方法。もうひとつは「柔らかく」設計する方法。我々は後者を選んだ。ボディの柔らかさで衝撃を吸収することで、結果的にそれが堅ろう性の向上につながると考えた。前者の方法は確かに加重に対しては強いかもしれない。ただ、落下や加圧にたいして必ずしも効果的であるかというとそうではない。

 柔らかく設計すると、落下や加圧に対して優位性がある。「のれんに腕押し」と考えてもらいたい。柔らかいものに対して圧力や衝撃を与えても、それほど影響がない。衝撃に逆らわないことで、衝撃をまともに受けないようにするという発想だ。「Q8220」はそれぞれの素材の柔らかさはもちろん、ねじ止めなども「ガッチリ」止めるのではなくある程度余裕を持たせた止め方をしている。

 ディスプレイ部分でも工夫をしている。今回から新しい液晶ディスプレイ(東芝松下ディスプレイテクノロジーが開発した薄型軽量液晶ディスプレイ)を採用した。ただ、この薄型ディスプレイを採用したからといって、その分きょう体を薄くすることはしていない。ディスプレイを薄くした分、天板との間に隙間が空く。ここにクッション材を入れるなどして堅ろう性にもフォーカスを当てている。薄型化と堅ろう性はバランスが重要。実はさまざまな部分を工夫することで、まだ薄くすることはできる。ただ、我々は薄さだけを追求することはしないということだ。

■ファンを採用しても、薄くなっている。

 ファンは「Q8220」のために開発した。普通、フレームはアルミで作るが、たった1gを減らすためにマグネシウム合金を使ったし、ファンの厚さも5mmに抑えた。これだけ薄くすると、ファンだけではもちろん放熱効率は上がらない。発熱に関してもかなり神経を使った。マザーボード上に実装したチップの高さですら放熱の邪魔になる。マザーボード上のチップやケーブルの配置、熱源をどこに置くか、スペースをどこにどれだけ空けるか、一つひとつ実験を重ねながら検証していった。放熱構造は、できたものに対して「さてどう冷やそうか」という思想では絶対にうまくいかない。

■1.8インチHDDの速度や容量でのデメリットは。

 今回は設置スペースで圧倒的に有利であることが、1.8インチ型ハードディスク(HDD)を採用する決め手になった。速度に関しても現在はそこまで気にするほど遅くはないと考えている。容量は20GB、30GB、60GBと用意している。20GBだと確かに少ないと感じる人もいるかもしれないが、「Q8220」はあくまでビジネス向け。大きな動画ファイルなどを保存する用途はない。さらに、最近の情報漏洩(ろうえい)問題などでノートパソコンにあまり多くのファイルを保存しないようにする流れもある。ユーザーから容量面で不満がでることはないと考えている。
 

■バッテリー駆動時間が2時間と短く、価格が30万円と高い。

 今回の命題であった「1kgを切る」ことを視野に入れた結果、バッテリー駆動時間は2時間になった。内蔵バッテリーパック(M)で4.5時間(バッテリー装着時の重さ1080g)、(L)の場合は9.5時間(バッテリー装着時の重さ1210g)というオプションも用意している。ただ、標準バッテリーで軽さを維持しつつ、バッテリーの駆動時間を延ばすのは今後の課題でもある。

 価格に関しては、「Q8220」は企業向けといっても、ひとつの企業に数百台導入してもらうようなイメージは持っていない。企業の上層部の一部が持ってくれるような製品コンセプトだからだ。販売台数だけを気にする製品とは捉えておらず、あくまでこういった製品を市場に「投入すること」に意義があると考えている。

■ヨーロッパでは3G(第3世代携帯電話)搭載のQシリーズが発売される。

 3Gに関しては、我々だけで決められることではない。もちろん、素材としての準備はしているが、携帯電話会社の対応次第という部分が多分にある。日本でも前向きに考えていきたい。