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 「日経パソコン」4月10日号の特集1「検索上手はパソコン上手」では、インターネットからデスクトップまで、さまざまなシーンにおける検索の活用法を紹介した。本誌の記事中では紹介できなかったが、数年前から書籍の全文をスキャンして検索可能にする機能が話題になっている。

 米アマゾンでは2003年から「Search Inside!」、米グーグルでは2004年から「Google Print(現在は「Google Book Search」に名称を変更)」と呼ばれる、英語版の書籍全文検索サービスをそれぞれ提供している。

 日本ではアマゾン ジャパンが2005年11月から「Search Inside!」の日本語版、「なか見!検索」を公開した。開始から数ヶ月が経過した今、反響はどうなのか。同社の友田雄介コンテンツ開発統括部長に聞いた。

■「なか見!検索」で検索可能なデータの種類は。

 全文検索が可能なのは出版社の了解を得た書籍のみになる。サービス開始当初、検索対象の書籍は約13万冊だったが、現在は約16万冊にまで増加している。

 検索できるのは本文だけではない。奥付や見返しも含めて、本の上にあるテキストはすべてスキャンしてOCRをかけるか、出版社からデジタルデータを受け取って、検索可能にしている。

 なか見!検索を使うには、まずAmazon.co.jpの「和書」や「洋書」の項目で、通常の検索を実行してもらう。すると結果の画面にタイトルでの検索結果と、なか見!検索の結果が両方表示され、タブで切り替えて見ることができる。

■ユーザーにとって、なか見!検索のメリットは。

 ユーザーがオンラインで書籍を買わない理由の1つには、「内容を確かめられない」というのがあると思う。オンラインショッピングで物を買う場合、多くのケースは「指名買い」になる。それはAmazon.co.jpでも同じで、今まではタイトルや著者名から、ピンポイントで検索をかけて本を探していた。それが全文検索が可能になったことで、書店で購入前に「ぱらぱら見」をするような、ピンポイントだけでない、より幅広い探し方ができるようになった。現実世界の書店にWebサービスが近づいたとも言える。

 例えば「価格弾力性」という単語———これは結構よく使われる経済用語だと思うが———これを「和書」の項目で検索すると、なか見!検索の効果が分かりやすいと思う。内容的に「価格弾力性」の説明をしている本はあっても、タイトルにそのままこの用語を使った本はない。つまりタイトル検索では結果が出てこない。しかし、なか見!検索で検索すれば関連書を見つけられる。

■書籍の全文検索に関しては、出版社側から「オンラインで内容が読まれたら、本の売り上げが脅かされるのでは?」という危惧があると思う。売り上げへの影響はどう考えているか。

 具体的な数字はいえないが、なか見!検索の導入後、書籍全体の売り上げにじわじわと底上げ効果が見られる。

 そもそも本は超多品種少量生産な商品。「現実の書店ではAmazon.co.jpのような検索はできず、Amazon.co.jpでは本の内容を確認することができない」という今までの状況では、自分の目的に合った本を見つけるのはなかなか難しかった。なか見!検索を使うことで、いわゆるベストセラーではない、少部数の発行で単価が高い専門的な本を探して、内容を確かめて買う、という人が増えているのではないか。

 セキュリティに関しては、印刷制限や検索エンジンのクロール避けなどを実施している。それから、一度の検索で閲覧できるのは、検索結果のキーワードが含まれているページと、その前後2ページの合計5ページまでにしている。

■今後、Amazon.co.jpのサービスはどういった展開をしていくのか。

 Amazon.co.jpは小売業なので、より多くの人により多くの商品を届けるのが基本になる。これは今までもこれからも変わらない。ただ、商品を届ける方法として、もう少し別の方法も考えられる。

 書籍は“物”だが、コンテンツの内容それ自体を売っているともいえる。だから書籍という“物”でなくて、例えばPDFやHTMLなどのデータを、パソコンやモバイル端末向けに販売するというやり方もあると思う。これは日本ではなくて米国の話だが、米アマゾンでは書籍の中から必要なページを購入できる「Amazon Pages」や、購入済みの書籍をインターネットでデータとしても読めるようにする有料オプション「Amazon Upgrade」を計画中だ。