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 ダイエーは今年7月から、新しいポイントカード「ハートポイント」の本格導入に踏み切る。従来のポイントカードを廃止し、代わりに来店頻度の高い優良顧客にとって魅力的なものにする。7月から全国で本格導入を始め、2007年8月までに全国200店強の直営店すべてに導入する計画だ。

 ダイエーの2006年2月期の単独決算は、営業収益が1兆1754億円で、経常損益は29億円の赤字だった。新ポイントカードを原動力にして優良顧客を増やし、今年度中に経常黒字と、1店当たりの売上増を目指す。ポイントカードプロジェクト課の藤村一義課長は、「個々のお客様に応じたマーケティング実現へのステップとして、ポイントプログラムを変更する。お客様の利便性を高めるとともに、データ分析の精度を上げ、きめ細かなマーケティングを行い、営業力の強化を図っていく」と語る。

 これまで、直営の総合スーパー「ダイエー」「ショッパーズプラザ」などには「Don Don たまーる」と呼ぶポイントカードが、直営の食品スーパーマーケット「グルメシティ」には「グルメシティ倶楽部」と呼ぶポイントカードが、それぞれあった。発行枚数は合計で1015万枚。これらを順次、廃止して、ハートポイントに切り替えていく。

 ダイエーはまず4月12日にグルメシティ八幡町店(東京都八王子市)にハートポイントを導入した。さらに4月19日にはダイエー船堀店(東京都江戸川区)に入れる。今年6月下旬まではこの2店舗で試験導入を続けて、運用ノウハウを蓄積する。

 店舗にハートポイントを導入するためには、店内に設置した既存のPOS(販売時点情報管理)システムを置き換える必要がある。このため、POSシステムを刷新した店舗から順次、ハートポイントを導入していく。レジの入れ替えなどにかかるシステム投資額は約135億円に達する。

 ハートポイントは、新しいPOSシステムを導入した店舗すべてで利用できる。従来はカードを発行した店舗でしか使えなかった。しかも、これまでとは違って食品売り場だけでなく、すべての売り場で利用できる。

 また、これからは累計で500ポイントたまるごとに、顧客はレジで500円の割引を適用するかどうかを選べるようになる。従来はサービスカウンターまで行って、事前に500円のお買い物券と交換しておく手間がかかった。ポイントの有効期限は最終購入日から数えて3カ月と、従来の1~2年よりも短くなる。頻繁に来店してくれる優良顧客に手厚くサービスをしようという狙いがある。

 ハートポイントにはもう1つ、優良顧客を増やす仕掛けが隠されている。ワン・トゥ・ワン・マーケティングのノウハウを持つオーエムシーカードと共同で顧客データを分析・管理し、顧客セグメントにより即したダイレクトメールなどきめ細かな販売促進策を打つ計画だ。

 従来とは異なり、全商品の全店舗での購買履歴をリアルタイムで把握できるようになるため、綿密な分析が可能だ。販売促進策はもちろん、日々の発注計画や商品企画にも活用できる。だが、一時の家電量販店と同様にポイントカードを単なる値下げの道具としてしまっては黒字化から遠のきかねない。ダイエー浮沈の一翼を情報活用戦略が担う。