「2006年は大きな革新を遂げる」。インテルのカーク・スカウゲン デジタルエンタープライズ事業本部副社長 兼 サーバー・プラットフォーム事業部長はこう意気込む。Itanium2とXeonというサーバー向けプロセサの現状と将来像について聞いた。

(聞き手は高下 義弘=ITpro)


-----65ナノメーターのプロセス,デュアルコア,チップセットを含めた各種機能を総合した「プラットフォーム」の開発など,新しい取り組みを進めています。

 ご指摘の通り,インテルは2006年,サーバー向けプロセサについて,それら三つの領域で大きな革新を遂げました。

 まず,65ナノメーターのプロセスで製造するサーバー向けプロセサ「Dempsey(開発コード名)」を,間もなく出荷します。2006年中にインテルが出荷する主要なプロセサはすべて,この65ナノで製造された製品になります。

 本誌注:Dempseyはサーバー向けプロセサ・シリーズ「Xeon」の次期版。出荷は5月~6月の模様。


写真:米インテルのカーク・スカウゲン デジタルエンタープライズ事業本部副社長
撮影:山田慎二

 プロセスだけでなく,デュアルコアという重要な進化も成し遂げました。今年中には,出荷するサーバー向けプロセサの多くがデュアルコアになります。来年にはクアッドコア(四つのコア)化も実現します。

 一方のプラットフォームについては,新型の「Bensley」をプロセサのDempseyと合わせて投入します。これは処理性能の向上と,低消費電力という相反する要素の両立を実現するものです。プロセサと周辺チップセットとの接続形態を一新し,ピークの転送速度だけでなく,スループットの大幅な向上が見込めます。

 これまでインテルは1年の間に遂げられる技術革新は一つか二つ,というのが通例です。その意味でも,2006年は大変良い年,と言えるでしょう。

既存の基幹システムをItanium2で置き換え

 このような三つの革新をベースに,新しいプロセサを順次投入していきます。

 ハイエンドのサーバー向けプロセサである「Itanium2」については今年後半,デュアルコア化した「Montecito(開発コード名)」を投入します。すでにOEMのサーバー・ベンダーに対して,約1000のプロセサ・ユニットを提供し,問題なく動作することが確認されています。また,来年2007年には「Montvale」,2008年にはクアッドコア化した「Tukwila」を提供する計画です。その次の「Poulson」は2010年までに提供できる見込みです。

 Itanium2は,従来メインフレームやRISCベースのシステムが使われていた領域にも,次々と採用されています。例えば通信業界です。日本ではKDDI,韓国では韓国テレコムが,課金などの主要システムにItanium2のサーバーを採用しています。もちろん自動車をはじめとした製造業でも,基幹システムへの採用が相次いでいます。今年から来年にかけて,主要なアプリケーション分野でItanium2への置き換えが進んでいくと見ています。

Xeonの低消費電力版は40Wで動作

-----ブレード・サーバーの普及に合わせて,「Xeon」への注目も集まっています。

 Xeonの主力ラインである「DP」については,Dempseyに続いて今年後半に「Woodcrest(開発コード名)」を投入します。そして2007年にはクアッドコア(4つのコア)のプロセサ「Clovertown(開発コード名)」を投入する予定です(図)。


図:「Xeon DP」の直近のロードマップ。消費電力とコア数を示した(インテルの資料を基に作成)

 インテルは電力当たりの性能を高めることに注力しています。例えば,今年第3四半期中にも投入する予定の低消費電力版「Woodcrest LV」は,通常のWoodcrestの半分,40Wで動作します。

ソフト・ベンダーやSIベンダーの協力が不可欠

-----今回インテルは仮想化技術の普及を目的とした「インテル バーチャライゼーション・テクノロジー(VT)・アクセラレーション・プログラム」を開始しました(関連記事)。ソフトに近い,いわば上位レイヤについて協力関係を作るプログラムをインテルが始めた意図は何でしょうか。

 インテル自身の活動領域は,あくまでシリコン上です。ただVTについて言えば,これまでミドルウエアなどソフト側で実現してきた仮想化機能をプロセサ上に組み込み,アプリケーションと協調動作させる必要があります。

 ですから,OSやミドルウエアのベンダー,あるいはサーバーやソフトを使ってシステムを組み上げるシステム・インテグレータとこれまで以上に協力しなければ,うまく進みません。今回のプログラムには,このような意図があったわけです。

-----先日,世界経済フォーラム(WEF)が世界各国のIT整備状況についてランキングを発表しました。日本は昨年の8位から今年は16位という厳しい評価になりました(関連記事)。インテルの日本におけるサーバー・プロセサ戦略に影響する部分はありますか。

 逆にこうした評価を踏まえて,ますますITをどう上手く活用するかの議論が日本国内で進む,と考えます。そこに,新しいインテルのプロセサが貢献できるのではと思います。