写真 懇談会終了後の会見で報告する座長の松原聡東洋大学教授
写真 懇談会終了後の会見で報告する座長の松原聡東洋大学教授
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 竹中平蔵総務大臣直轄の私的懇談会「通信と放送の在り方に関する懇談会」が4月11日,第9回会合を開いた(写真)。今回の会合では放送全般を総括し,(1)マスメディア集中排除原則,(2)IPマルチキャストの扱い,(3)地上デジタル放送開始後の空き周波数の用途,(4)県域免許のあり方−−を議論した。また,NHKの在り方についてもコーポレート・ガバナンスやチャンネル数の縮減,受信料制度や過去の番組を保存したNHKアーカイブスの扱いなどについて検討した。

 IPマルチキャストに関して,懇談会後の会見で座長の松原聡東洋大学教授は,「当初は地上デジタル放送の難視聴対策をベースに,その是非や技術的な課題,地域限定配信をどうするかなどを検討すべきだと考えていた。だが,(USENのインターネット放送)GyaOのように通信事業者が映像をIPで配信することをどう考えるのかも含めて議論すべきと考えを改めた」と発言。IPマルチキャストの著作権法上の扱いについても,次回の会合で再度検討することを明らかにした。

 映像コンテンツのネット配信に関する著作権法の問題については,NHKアーカイブスの扱いの中でも言及。NHKアーカイブスは,NHKが過去に放送した45万本の番組と,125万項目のニュース・クリップを保存している。松原座長は,「NHKアーカイブスのコンテンツは受信料で作った過去の番組。国民の資産なのだから公開を促進すべき」という考えを強調。しかし,「現在公開しているコンテンツは権利処理の問題でわずかに5千数百本だけ」(松原座長)だという。

 その5千数百本の権利処理もNHKアーカイブスの施設内での公開に関してだけで,ネット配信に関しては全く権利処理が進んでいないという。松原座長は,「懇談会の構成員からは,(ネット配信の権利処理は進んでいないが)NHKはDVD販売は積極的に展開し利益を上げている。やる気になればできるのではないかという意見も出た」ことを明かし,必ずしも著作権法上の問題だけで権利処理が進んでいないわけではないことを示唆。NHKアーカイブスのコンテンツの公開には,「VOD(ビデオ・オン・デマンド)などネットを活用する以外に方法はない。次回に著作権法上でIPマルチキャストが放送か通信かを検討する際に改めて考えたい」(松原座長)と語った。

 今回総括した放送分野だけでも,内容は盛りだくさんだ。会見に参加した記者からは,「NHKのチャンネル数を減らすには相応の基準を明確にする必要があるが,そこまで議論を詰められるのか」という質問が飛び出した。これに対して松原座長は,「構成員に徹底的な対立はない。5月にはある程度固まる」という見方を示した。

 次回会合は4月20日の予定で,NTTの在り方など通信分野の総括をする予定。また今回積み残した,IPマルチキャストの著作権法上の取り扱いについても議論する。5月に全体を通して改めて議論をして,懇談会としての方向性をまとめることになる。