独自の無線LANサービスを展開するスペインの通信ベンチャーFON(フォン)が、日本市場に参入する。早ければ5月に日本法人を設立、日本語のWebサイトも立ち上げる予定だ。7月には有料のサービスを開始する。国内では1日当たり200円程度で無線LAN接続を利用できるようにする方針だ。

 FONは、個人や企業が利用している無線LANルーターのファームウエアを、自社が開発したソフトに書き換えさせることで、一般ユーザー向けの公衆無線LANアクセスポイントに変える。自らが、無線LANのインフラを設置するのではなく、利用者の持つ無線LANルータをアクセスポイント化させることで、インフラ敷設コストを大幅に削減し、安価に公衆無線LANサービスを提供することを可能とした。

 さらにFONは、一般のインターネット利用者が、同社向けに無線LANルーターを開放するための仕組みも工夫している。

 まず、自らの無線LANルーターを、FONのインフラとして無料で開放した場合には、FONのインフラとして開放されたすべての無線LANルーターを無料で利用できる。有料の公衆無線LANサービスを開始した後は、自らが無線LANルーターを開放するかわりに、そのルーターからの収益の半分を受け取ることができるようにする。FONは、前者の方法で無線LANルーターを開放する人間を「Linus」、後者を「Bills」と呼ぶ。Billsは、Linusと異なり、FON向けに開放された無線LANを無料で利用することはできない。

 FONは、LinusとBillsが提供する無線LANのアクセスポイントの利用料で収益を得る。同社のマーティン・バーサフスキCEO(最高経営責任者)は、「FONのサービスは、多くの人間が参加することで成り立つ。Web2.0的な形で公衆無線LANサービスを提供する企業だ」と話す。

 さらにバーサフスキCEOは、「FONは警察や消防が使うようなミッション・クリティカルなサービスではない。サービスの牽引役になるのは、ニンテンドーDSやPSPといった無線LAN対応のゲーム機のユーザーだろう」と話す。「一般の携帯電話よりも、Wi-FIはデータの転送速度の面で優れている。動画像などのコンテンツをやり取りしたい人間にとって、FONは魅力的なはずだ。それから、FONはグローバルに利用できるサービスでもある」(同CEO)としている。

 ここ数年で無線LAN対応のデバイスは急激に増えているものの、安価にネットにアクセスできるサービスは提供されていない。今後、ゲーム・ユーザーなどが草の根的に無線ルーターを開放していけば、利用できるエリアが爆発的に広がる可能性がある。

 現在、同社は既存の無線ルーターをFON対応するためのファームウエアの提供を進めている。米リンクシスの無線ルーターが書き換えに対応しているほか、バッファローの一部機種でも稼働することを確認したという。また、すでに無線ルーターを導入しているユーザー向けに、後付けでFONに対応させる専用アダプタを3000円程度で提供する。

 FONは2005年11月に設立。2月にスカイプやグーグルが出資することで一躍脚光を浴びた。4月時点のFONの登録者は2万9000人以上、144カ国で利用されている。現在日本でも46人の登録者がいるという。