中央に置かれた白い機器が、香り発生装置。青、赤、緑などさまざまな色の光を放ちながら香りを生成する
中央に置かれた白い機器が、香り発生装置。青、赤、緑などさまざまな色の光を放ちながら香りを生成する
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中央の3列に、合計3台の香り発生装置を設置する
中央の3列に、合計3台の香り発生装置を設置する
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 NTTコミュニケーションズは2006年4月11日、同社の「香り通信」システムを映画館に設置すると発表した。映画のシーンに応じた香りを生成し、客席に放つ。対象となる映画は、2006年4月22日公開の「ニュー・ワールド」。東京と大阪の2つの映画館で、公開から2週間限定で稼働させる。

 香り通信とは、同社が2004年12月から手がけているシステム。6種類のアロマオイルが入った専用の装置をユーザーがパソコンに接続しておき、インターネット経由でオイルの配合方法(「香りのレシピ」)をダウンロードする。レシピに応じて、異なる香りが部屋に広がる仕組みだ。今回はパソコンではなく、専用のネットワーク接続装置に接続して使用する。

 「ニュー・ワールド」は、17世紀初頭のアメリカを舞台にした恋愛物語。シーンに応じて、7種類の香りを発生させる。例えば、大自然に住む人々の様子が映し出されるシーンでは森林の香り、主人公の2人が惹かれ合うシーンでは花の香りといった具合だ。「映像と音楽の美しさに香りを加えれば、よりいっそう雰囲気が出るのではないか」(配給元である松竹の吉田直子宣伝チーフプロデューサー)というアイデアの元に実現した。

 対象映画館は、東京の「サロンパス ルーブル丸の内」と大阪の「梅田ブルク7」。香り発生装置が設置されるのは中央部の3列で、この部分の座席は「アロマ・プレミアシート」と名付けられる。この座席の利用は予約制だが、料金は通常の席と同じ。

 同社によれば、香り通信に興味を示している企業はほかにも多数あるという。例えば住宅の製造販売会社や自動車開発会社などが、自社製品の差別化のために使いたいという話が進んでいる。さらに将来を見越して、同社が手がけるインターネット接続サービス「OCN」が配信する動画と香りを連動させるといった構想も進めている。ただ現在のところ香り発生装置は7万3500円と、一般のパソコンユーザーが気軽に購入できるとは言い難い価格。「一般に普及させるには、少なくとも現在の半分以下の価格にする必要がある」(同社のコンシューマ&オフィス事業部 営業推進部の境野哲IP販売推進担当課長)。2006年夏~秋をめどに、低価格の装置や新たなサービスを発表する予定だ。