富士通のパーソナルビジネス本部パーソナルシステム事業部長齋藤邦彰氏
富士通のパーソナルビジネス本部パーソナルシステム事業部長齋藤邦彰氏
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4月11日に発表になった37インチ液晶の「FMV-DESKPOWER TX」
4月11日に発表になった37インチ液晶の「FMV-DESKPOWER TX」
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 富士通は2006年の夏モデルで37インチ液晶ディスプレイを搭載したデスクトップパソコン「FMV-DESKPOWER TX TX90S/D、TX95S/D」を投入する。同社は1年前、2005年の夏モデルでデスクトップパソコンとしては初の32インチ液晶搭載の「FMV-DESKPOWER TX TX70L、TX90L/D」を発表。デスクトップ大画面化の先陣を切ってきた。パーソナルビジネス本部パーソナルシステム事業部長の齋藤邦彰氏に製品展開の狙いと戦略を聞いた。

■37インチ液晶のパソコンを投入する理由は。

 我々が狙う1つのターゲットとして「リビング」があるからだ。32インチを製品化してみて、リビング用としては「少し小さい」「中途半端」という声が聞こえたため、37インチとさらに大きい液晶のモデルを投入した。
 当初、32インチのパソコンを購入するユーザーの動機は「DVDレコーダーとテレビとパソコンが3つ付いて40万円は安い」という「お得感」が中心だった。今後はこの「お得感」だけでなく、テレビもパソコンの機能は不可欠、という認識で購入するユーザーが増えていくだろう。リビングのテレビは「パソコンを背負ってないと駄目」と言われる時代が来る、と考えている。

■32インチ液晶を搭載したパソコンの売れ行きは。

 発売当初は、富士通のデスクトップの中で10%を占めるほどの売れ行きで、生産が追いつかないこともあった。現在はおそらく全体の5%くらいで落ち着いていると思う。
 ただ、飽くまで今までのデスクトップ製品に対する「追加」の市場なので、シェアはあまり重要視していない。この市場に「FMV-DESKPOWER TX」のような製品を「投入すること」が大切なのだ。IT業界ではハードもサービスも立ち上がるときは一気に立ち上がる。「iPod」がいい例だ。誰もiPodがこんなに短期間で爆発的ヒットになるとは思わなかっただろう。大画面デスクトップも同じ。今後「ぱっ」と一気に立ち上がった時に慌てないようにしたいと思っている。

■パソコンの機能を持つテレビの利点は。

 一つは、「アップグレーダビリティ」だ。購入当初にパソコンが持っていない機能などがあっても、ソフトをインストールするだけで応用が利くし、新しい技術や方式が世の中に出てきたとしても、アップグレードで対応できる。
 もう一つが、それを支える「ネットワーク」だ。アップデートやソフトのダウンロードにはそもそもネットワークが必要。今後は、膨大なコンテンツが家中に点在するようになる。ホームネットワークが実現すれば、ネットワーク越しにそれらのコンテンツを探さなくてはいけなくなり、その中心になるのはパソコンになるはずだ。

■パソコンが家電に負けている部分はあるか。

 一番はインスタント性だ。1秒程度で視聴できるテレビに比べて、パソコンは起動するのに時間がかかる。一部の機能だけに制限して起動時間を短くすると、パソコンの良いところが消えてしまう。インスタント性は、パソコンの「アキレス腱」だ。
 また、操作性や映像の色作りなどの点でもまだ見習うべき部分があると感じている。「職人芸」とも言えるアナログの処理が入る部分に関しては、家電メーカーにはかなわない。ただ、状況は変わった。パソコンのテレビ機能の処理は、アナログの時代からデジタルの時代に移行している。デジタルの時代になって、高画質画像を実現できる汎用チップが簡単に手に入るようになった。さらに、画像を面で捉えて補正する「Dixel」というデジタル処理技術も開発した。また、「セキュア LSI」などの著作権保護技術は、我々にアドバンテージがあると考えている。

■「FMV-DESKPOWER TX TX95S/D」は、Blu-ray Disc(BD)を採用した。HD DVDではなくBDを採用したのはなぜか。

 記録に対応しているからだ。HD画質(ハイビジョン)で2時間以上のコンテンツを保存できる利点は大きい。ノートパソコンの「FMV-BIBLO NX NX95S/D」ではHD DVDを採用しており、「どちら側についた」というようなことはない。今後はダブルドライブもあり得る。

■6月に始まるサッカーの「ワールドカップ」と、Windows Vistaの発売延期は、夏モデルの販売にどう影響するか。

 Vista延期のダメージはある。買い控えで売り上げが落ちることは必至だろう。ただ、それはどこのメーカーも同じことで、富士通だけではない。ワールドカップに関しては、前回の4年前ほどではないと考えている。当社は、4年前と比べて大画面パソコンをラインアップに持つという違いがある。また、デジタル放送に対応するモデルを投入している。買い控えは緩和できるのではないか。