デル日本法人のジム・メリット新社長(左)と浜田宏前社長
デル日本法人のジム・メリット新社長(左)と浜田宏前社長
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 4月3日付けでデル日本法人の代表取締役社長を退いて同社取締役に就任した浜田宏氏が、自身の将来と日本のパソコン・メーカーの将来について語った。4月5日にデルが開催した、後任の社長であるジム・メリット氏のお披露目を兼ねた記者会見で明らかにした。

 自身の今後について浜田氏は、「デルは、設立から20年で年間売上高が6兆円を超えた。世界の歴史で最も成長が早い企業だ。私もデルで10年以上働いて、さまざまな経験をしてきた。体のすみずみまでデルの血が流れていると言ってももいい。この経験を生かして、日本の企業に役立つことをしたい」。明言は避けたものの、5月にデル日本法人の非常勤顧問に就任した後、自らが代表として企業を立ち上げることを示唆した。社長退任の理由については、「一人の人間として、5つほどやり遂げたいテーマがある。デルの社長を兼任したままでは実現できないので辞めることにした」と話した。

 浜田氏は、日本のパソコン・メーカーの将来についても、自身の考えを語った。「日本のパソコン・メーカーの数はテレビ・メーカーよりも多い。そのテレビの世界でもすべてが勝ち組になれるわけではなく再編が進みつつある。もっと数の多いパソコン・メーカーで、何らかの再編があって当然ではないか。ただし、少なくとも国内で上位3社、あるいは5社のメーカーはパソコン事業から撤退するようなことはないだろう」(浜田氏)。

 さらに今後、日本のパソコン・メーカーが世界市場で生き残るための条件として、「世界のパソコン市場で戦うためには、デルやヒューレット・パッカード(HP)を超える何かを持たなくてはならない。たとえば、デルを超える直販モデルを実現したり、HPを超える全世界の販売チャネルを作り上げたりする必要がある。こういったことができるかどうか」を挙げた。「日本のメーカーのノート・パソコンの製造技術はすばらしい。この技術は世界的に見ても誇れるものだ」と、日本のパソコン・メーカーの生き残るヒントを語った。

 なお新社長のジム・メリット氏は浜田氏が取締役を務める5月のうちに業務を引き継ぐ。「ここ数年、製品出荷と顧客満足度のバランスが崩れ、顧客満足度が低下していた」(浜田氏)ため、「4月中に日本の顧客企業を訪問し、現状把握から始める」(メリット新社長)。新社長の抱負は就任3日目ということもあり、「社外ではエンタープライズ向けのサーバー・ストレージ事業とサービス事業に、社内では人材育成に注力する」と、従来路線を踏襲する内容にとどまった。グローバル企業のセールスに強みを持つメリット氏ならではの戦術が具体化するのは、5月以降と見られる。