東京全日空ホテル(東京・赤坂)
東京全日空ホテル(東京・赤坂)
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 外資系大手の参入やインターネット予約の普及により競争が激化するホテル業界で、東京・赤坂にある東京全日空ホテルが、需要予測システムを導入して業績を伸ばしている。

 同ホテルの2005年の平均稼働率は前年比7.8%増の80.6%となった。客室単価を下げたわけではない。平均単価は前年比232円増と,むしろ高くなっている。ホテル業界には客室稼働率と単価をかけ合わせたRevPAR(Revenue per available room)という指標がある。この指標のランキングで,同ホテルはこれまで都心の主要ホテル15社のうち7~8番目ということが多かったが、トップ3に食い込むようになった。

 東京全日空ホテルが2004年9月に導入したのは「レベニューマネジメントシステム」。同システムを使えば、向こう1年先の予約データと過去の実績データを取り込んで,最大1年先までの需要を予測することができる。キャンペーンやイベントなどの情報を入力すれば、それを加味した予測データも出てくる。

 ホテル業界では需要予測の不備が販売機会の大きな損失を招く。例えば、格安レートのキャンペーン予約を埋めてしまうと,直前に定価料金を払ってでも泊まろうという客を断ってしまうことになる。また、土曜を満室にしてしまうと、土曜と日曜の連泊を望む客を断らなければいけない。さらに、長年の勘に頼って価格を変更していると、予約部門のマネジャーが不在のときには判断できない、といった事態を招く。レベニューマネジメントシステムによる的確な需要予測で,こうした機会損失を回避しやすくなる。

 もちろんITがすべての解決策にはなり得ない。東京全日空ホテルでは最新のITによる需要予測を参考にしながらも、毎週、各部門の幹部がデータを基に価格戦略を話し合う場を持っている。システムから得られる4カ月先までの需要予測データを使って,料金やキャンペーンについて話し合う。

 「システムを導入すると決めたときから,部門長を巻き込んだプロジェクトチームで動いてきた」と鈴木謙次郎マーケティング統括支配人は話す。東京全日空ホテルはITと長年の経験の勘という両輪をうまく回そうとしている。