東芝は2006年3月31日、世界初となるHD DVDプレーヤー「HD-XA1」の量産出荷を始めた(東芝の発表資料)。価格はオープンで、実勢価格は約11万円。東京近郊の大型家電量販店から順次販売を始め、2006年4月8、9日の土日までには全国の量販店で発売できる態勢を取るとしている。
今回の製品はNEC製ドライブを採用している。HD DVDのほかDVDとCDの再生が可能。DVD-ROM形式の映像ソフトに収録されているSDTV画質の映像を、HDTV画質に変換して再生する補間回路を備える。映像の不正コピーを防止する観点から、HDTV画質の映像出力にはHDMI端子やD4端子を用いることが必須となる。同製品にはコンポジット映像端子やS映像端子もあるが、これらはSDTV画質での出力専用となる。
同製品の発売に合わせ、HDTV画質の映像を収録したHD DVD-ROM形式の映像ソフトの提供も始まる。ポニーキャニオンが3タイトルを2006年4月7日に発売するのを皮切りに、2006年5月までに5タイトルが発売予定。これを含め、現時点で23タイトルの市販が決まっている。一部タイトルでは、同一内容を片面にHD DVD-ROM形式、もう片面にDVD-ROM形式で記録するという方式を採る。なお、発売当初は映像ソフトの流通が少ない事態が想定されるため、東芝は2006年4月27日以前の出荷分について、「バイオハザード」「ムーンライト・ジェリーフィッシュ」の2タイトルのHD DVD映像ソフトを添付する。
HD DVD内蔵PCも出荷間近、Xbox 360向けは明言避ける
このほか東芝では、2006年6月のサッカー・ワールドカップに合わせてHD DVDレコーダーを発売予定。現行のDVDレコーダーなどと同様に、テレビ映像を録画してHD DVD媒体に保存できるようにする。パソコン向けとしては、HD DVDドライブを内蔵したノートパソコンを2006年4月~6月をメドに発売する予定だ。
なお、米マイクロソフトが家庭用ゲーム機「Xbox 360」のオプション製品としてHD DVDドライブを発売することを計画しているが、この発売時期については「顧客メーカーの製品に関わる話なので、東芝の立場としては答えにくい」(同社 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社社長の藤井美英氏)として明言を避けた。
「北京五輪までに、今のDVDレコーダーに近い価格へ」
製品発表の記者会見において藤井氏は、「42インチなど大画面の薄型テレビを購入する消費者が増えており、HDTVの画質の良さを訴求しやすくなっている。現行のDVDの市場を急速に置き換えていき、金額ベースでは2008年度、台数ベースでも2009年度にはHD DVDがDVDを抜くことを目指す」と表明。発売当初の月産台数は2000台だが、2006年末には月産数万台規模まで増産。パソコン向けやXbox 360向け製品を含め、「2006年度に全世界で60万台~70万台のHD DVDドライブを出荷する」(藤井氏)との目標を掲げた。
HD DVDの本格的な普及の機会として期待される2008年の北京五輪商戦に向けて藤井氏は、「光ディスクドライブの総出荷台数の4割をHD DVDにしたい。多くの消費者が購入できるよう、現在のDVDレコーダーに近い価格で製品を出したい」とした。映像ソフトについては、今後米ハリウッド各社の作品をラインアップに加え、2006年末までに150~200タイトルの発売を計画しているという。
「Blu-ray Discに劣るところは1つもない」
次世代光ディスクをめぐっては、シャープやソニー、松下電器産業などがHD DVDの対抗規格であるBlu-ray Disc方式のレコーダーを出荷済み。2005年にHD DVDとBlu-ray Discの両陣営が規格統一に向けて話し合いを進め、最終合意の直前まで進展しながら、結局は統一が実現しなかった経緯がある。結果的に、互換性のない2種類の次世代光ディスク対応機器が市場に出回ることになる。
こうした状況について藤井氏は「規格統一は重要な話だし、統一に向けた話し合いの場でも物理仕様で譲歩するなど努力してきた。本当は2種類を並立させたくない」と語る一方、「HD DVDがBlu-ray Discに対して技術的に劣る点は1つもない。2006年末までにはすう勢をはっきりさせたい」と宣言した。