受託開発など、ソフトウエアに絡む取引の会計処理が厳格化されることになった。日本の会計基準作りを担う企業会計基準委員会(ASBJ)がガイドラインを公表したもので、2007年4月以降に始まる事業年度から適用する。今回のガイドラインは、受託開発とパッケージソフトの開発・販売の両方が対象だが、受託開発への影響が大きい。1年の猶予期間で、ITサービス会社は売上計上の方法を見直し、現場に新ガイドラインを徹底させる必要がある。

 具体的には、次のケースで売上計上するには、「取引の存在を確認し、客観的に説明できるようにする」ことを義務付けた。(1)取引契約がITサービス企業間にとどまり最終顧客とまだ契約できていないない、または契約書がドラフト段階にある、(2)成果物の提供が終わったことを示す検収書などが入手できてない、または検収書があっても入金が遅れていたり、バグの発生などで作業が続いていたりしている、(3)売上計上後に、顧客に多額の返金や大幅な値引きが見込まれている、または類似の取引で過去にそのようなケースが多発している--などである。

 また、ソフトのほかにハードや保守サービス、教育などを一体化した取引については、契約は一体でも、成果物を納品する時期は異なることがある。こうしたケースで、納品の時期は異なるのに、一括で売上計上するのは問題があるといい、状況に応じて、複数の契約に分けて収益を認識するよう求めている。

 ソフトが絡む取引の、いわゆる「純額・総額計上」の問題でも、考え方を明確にした。取引で、顧客の元請けとなる企業が顧客と下請けの協力会社の間に入る場合、元請けに通常求められるリスク(在庫リスクや信用リスク、瑕疵担保責任など)を負っていない場合は、手数料だけを売上計上することとした。逆に、顧客との取引の総額を売上計上する場合は、こうしたリスクを負っていることを示すことが必要になる。

 今回のガイドライン「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取り扱い」は、2004年に表面化した一部IT企業の粉飾決算問題を契機に、ASBJが2005年11月に立ち上げた専門委員会で議論してきたものだ。「業種」を対象にするのではなく、「ソフトウエア」に絡む取引を対象にすることで、IT取引のあいまいな収益認識を排除する。

 当初は2006年4月以降の事業年度から対応を求める考えだったが、期をまたがる大型案件を抱えていたり、多数の顧客を抱えていたりするITサービス会社の事情を考慮し、1年の猶予期間を設けた。ITサービス会社が前倒しで適用することは可能だ。