写真 「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」の第2回目会合
写真 「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」の第2回目会合
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 総務省は3月30日,「2010年代のケーブルテレビの在り方に関する研究会」の第2回目会合を開催した(写真)。今回の研究会は「ケーブルテレビ(以下CATV)の現状と課題を認識するため」(総務省)に,CATV事業者からヒアリングを実施。ジュピターテレコム(J:COM)の森泉知行代表取締役社長最高経営責任者,KDDIの森田圭コンシューマ事業統括本部ブロードバンド事業推進本部長,全国有線テレビ協議会長の山口博続・福島県西会津町長の三者がそれぞれCATV事業の現状と課題を説明した。

 J:COMは,複数の都市部でCATV事業を運営するMSO(Multiple System Opertator)の立場からヒアリングに出席。森泉社長は同社の強みをテレビ放送だけでなく,インターネット接続や0AB~J番号を付与できる固定電話事業を組み合わせた“トリプルプレー”にあると説明。その結果,他のCATV事業者のARPU(1契約者当たりの平均月間収入)が5000円前後のところ,同社は約7500円と高いARPUを実現しているとした。同社の契約者は,CATV,インターネット接続,固定電話の3サービスのうち,一契約者当たり平均で1.72サービスを利用しており,契約サービス数が増えるほど解約率も低くなると述べた。

 また,USENの無料動画配信ポータル「GyaO」との競合について,研究会の構成員から質問された森泉社長は,「広告収入だけでビジネスを成り立たせるのは難しい。ネットワークの容量も使う。今は“ただ”で高速道路を走っているようなもので,いずれは(インフラ提供側が)容量を増やす必要が出てくる。そのコスト負担の話になってくるだろう」と回答。自社でインフラを保有するCATV事業者の立場から“インフラただ乗り論”に言及した。

 KDDIは,電気通信役務利用放送法に基づくIPマルチキャスト方式の放送を展開する事業者としてヒアリングに臨んだ。FTTHを利用する「光プラス TV」の提供状況などを説明。現在,光プラス全体の加入数は約18万であることなどを明かした。ちなみに直収電話「メタルプラス」の加入数は約170万人とした。

 KDDIは光プラスとは別に,他のCATV事業者向けにKDDI独自のIP網をバックボーンに使った固定電話サービス「ケーブルプラス 電話」を提供中。今後,他のCATV事業者から,VOD(ビデオ・オン・デマンド)など双方向処理が必要なサービスの要望が出れば,「ケーブルプラス 電話」同様,同社のIP網を使って協業できるとした。

 同社の「光プラス TV」は,既存のCATV事業者の競合サービスでもある。KDDIの森田本部長は,この点を踏まえながら「アクセス回線の光ファイバはNTTから借り受けている。アクセス系のネットワークをいかに連携して作っていけるかが課題」とし,今後も他のCATV事業者と協力していくスタンスを強調した。

 J:COM,KDDIとは異なり,地方のCATV事業者の立場として出席したのが全国有線テレビ協議会長の山口・西会津町長。有線テレビ協議会の会員は現在92会員。山口会長は,92会員中ディジタル化可能な伝送路を保有するのは47会員と少ないことを挙げ,国などによる支援が望まれていると説明した。

 次回の同研究会は4月24日に開催される予定。技術面からの課題のヒアリングや,海外のCATV事業者動向などが報告される。