インターネットをとりまく環境に関して今、様々なことが同時に起こっている。インターネットの個人利用者の増加と多様化、通信基盤のブロードバンド化、そしてブログやRSSといった新しい道具の登場である。これらを組み合わせれば、従来と違う世界が開けるのではないかと思っている。一連の変化は「Web2.0」という言葉で語られている。Webをビジネスに結び付けたいと思っている人たちが付けた言葉だと思うが、うまい名称だと思う。

 すでに当社は、顧客との双方向コミュニケーションの場としてWebサイトを活用している。インターネットを利用する会員を募り、個人に密着した情報を提供し、リアルな現場の販促セミナーと連動させる試みを続けてきた。会員は1997年から募り始め、2006年2月末時点で95万人になっている。こうした会員からインターネットを介して送られた情報が、新しい商品の開発に結びついたケースもある。また、セミナーの告知や募集については非常に効果がある。

 資生堂には「花椿会員」という従来から会員組織がある。花椿会員は資生堂製品の愛用者の方々で、年齢層は高めである。一方、インターネット会員は20代、30代が8割を占めている。化粧品に対する関心が高く、資生堂をメインに使う比率は半分以下。つまりインターネット会員はこれまで我々がリーチできなかった潜在顧客であり、インターネットを通して新たな顧客獲得につなげることは極めて重要である。というわけで最近は、マーケティング部門にWebの効果が認識されつつある。

 双方向コミュニケーションという点をみると、当社は「Web2.0」と言われる前から、Web2.0的なことをやっていたと思う。ただ、Web2.0で取り上げられるブログやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)といった、お客様同士が自由に情報交換するサービスはやっていない。この4月以降、ブログやSNSの導入を検討していきたい。

 ただし、「Web2.0がはやっているからブログを作る」という考えはない。化粧品は、極めてパーソナル性が高い商材なので、提供する情報をより個人に密着したものにしていかなければならない。これが根本にある考えだ。その目的を達成するにはどの方法がふさわしいかを考える必要がある。それにブログが適しているならば使えばいい。あくまでも、モノありき、システムありきではない。