ITスキル標準センターの小川健司センター長
ITスキル標準センターの小川健司センター長
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 情報処理推進機構(IPA)ITスキル標準センターは3月29日、4月1日付けで公開予定の「ITスキル標準(ITSS)」の新版(バージョン2)について、改訂の狙いや今後の普及活動を明らかにした。IPAは今後、企業の経営者にITSSをもっとアピールするなど、普及の速度を上げていく考えだ。

 ITSSは、IT関連業務に就く人材に求められるスキルや進むべきキャリア(職業)を示す指標。「ITアーキテクト」などの職種や専門分野ごとに、7段階のスキル・レベルを設定し、レベルごとに求められる業務経験やスキル、知識を定めている。ITSSが最初に登場してから約3年半を経て、初めて大幅に改訂した。

 バージョン2での改訂ポイントは、大まかに分けると3つ。1つ目は、ITSSのドキュメント構成を「キャリア」と「スキル」に明確に分離したこと。ITSSは、「過去の実績や経験(キャリア)」と「いま有する実務能力や知識(スキル)」という2つの要素でITエンジニアの実力をみる。これまでは「両者が混然一体としていて理解しにくいとの指摘があった」(IPA ITスキル標準センターの小川健司センター長)。

 2つ目は、ITエンジニアの実績や経験(キャリア)にかかわる「達成度指標」と呼ぶ評価基準を見直したこと。例えば実績を評価する際には、納入したシステムなど成果物の品質を考慮するようにした。またその前提として、ITエンジニアの職種や専門分野を現在のビジネスに合わせて整理し直した。

 3つ目は、職種や専門分野ごとに必要な知識を一覧できる「スキルディクショナリ」を新たに添付したこと。各職種・専門分野にどのような知識項目が必要かを把握しやすくするのが狙いだ。

 ITSSは、ITエンジニア自身が自分のスキルや目指すべきキャリアを確認するために利用するほか、企業がIT人材を育成する際の指針として利用する。そのため従来、ITSSに取り組む企業の担当者といえば人事部などの関係者が多かった。IPAはITSSの普及の速度を上げるために、バージョン2の公開と合わせて「経営者層からトップダウンでITSSの活用を広げる」(小川氏)ための施策を実行する。例えば4月から、経営者向けに作成したITSSの解説書を書店で販売する。また、企業がITSSを活用しやすくなるように「育成評価ガイドライン」といった関連文書を体系化して提供していく計画だ。