米ヤフーのジェリー・ヤン創業者兼取締役(右)とヤフー日本法人の井上雅博社長(左)
米ヤフーのジェリー・ヤン創業者兼取締役(右)とヤフー日本法人の井上雅博社長(左)
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 「当社のことを、(Web2.0の流れに取り残された)恐竜と言う人もいる。だが、いま我々はWeb2.0に対応できるよう生まれ変わろうとしている」。米ヤフーの創業者兼取締役のジェリー・ヤン氏(写真右)は3月28日、Yahoo! JAPANの10周年記念の記者会見で「Web2.0」に関してこう語った。

 Web2.0とは、ネット上の不特定多数の利用者が情報の発信やサービスの開発に能動的にかかわるようになったという、ここ数年のWebの変化を総括する言葉だ。ブログを使った情報発信などもWeb2.0の要素の一つになる。ヤン氏は、「インターネットが普及を始めてから10年が経ち、ようやく(消費者同士や企業が)コミュニケーションできるメディアに育ってきた。Web2.0の時代には、ネットを通じてすべてがつながる。今までのように専門家だけが情報を発信するのではなく、利用者側からの情報の発信が増える。ヤフーはソーシャル・メディアを生み出していきたい」と話す。

 最近では、米アマゾン・ドットコムや米グーグルなどの事業者が提供するWebサービスを、利用者側が自分のWebサイトに取り込む「マッシュアップ」が盛んになっている。個人サイトだけでなく、企業での利用例も増えている。ヤン氏は、今後Web2.0化を推進していくには、同社のサービスをマッシュアップできるようオープンなWeb APIをより整備しなければならないと主張する。「開発者は、ソーシャル・ブックマーク(同社が買収した「del.icio.us」)、写真共有サービス(同社が買収した「Flickr」)、地図、検索、カレンダといったヤフーが公開しているAPIを使って、自分たちのアプリケーションを作成できる。ヤフーは長期的な視野に立って、開発者に継続的に価値を提供することを目指す」(同)。

 Web2.0に対応したサービス展開がヤフーの収益にどれだけ寄与しているかについて、同席した日本法人の井上雅博社長(写真左)は、「現時点では直接収益には結びついていない」と話す。ただし、「利用者が日々の仕事や生活でWebのサービスをより使ってもらうようにすることが大切で、そのためにWeb2.0は重要になる。収益として一番分かりやすいのは広告だろう。消費者がよりWebを使うようになれば、広告媒体としての価値が上がり、広告市場が拡大する。それによって、当社はサービス開発投資に対するリターンを得られると考えている」(井上氏)。

 ヤフー日本法人は記者会見で、10周年記念事業の一環として研究機関「Yahoo!ラボ」を2006年度中(2007年3月まで)に設立することも発表した。インターネット関係技術や消費者の生活に関して研究活動を実施する。団塊世代向けサービス「Yahoo!セカンドライフ」も同年度中に始める。また、組織体制を変更し、ソーシャルネット事業部、地域サービス事業部、モバイル事業部を新設した。今後はこれらの分野に注力していく方針だ。