郵政民営化の準備会社である日本郵政は、2007年10月に誕生する郵便貯金銀行の基幹系システムとして、メガバンクから勘定系システムを買い取る検討を進めていることがわかった。

 買い取り候補として、メガバンクのシステム統合で不要になった旧富士銀行のシステムと旧UFJ銀行のシステムが浮上している。旧富士銀行のシステムは、合併行である、みずほ銀行が2004年12月に旧第一勧業銀行のシステムへの一本化を完了したため、現在は使われていない。旧UFJ銀行のシステムは、合併行の三菱東京UFJ銀行が2008年末をメドに旧東京三菱銀行のシステムへの一本化を予定しており、現在のまま使われ続けることはない。旧富士銀行の勘定系システムは日本IBM製メインフレームで、旧UFJ銀行の勘定系システムは日立製作所製メインフレームで、それぞれ動作する。

 今日の新聞報道によれば、日本郵政は旧富士銀行のシステムを所有するみずほ銀行と、旧UFJ銀行のシステムを持つ三菱東京UFJ銀行に、買い取りの打診をしたという。本誌の問い合わせに対し日本郵政は、「いろいろな方向性で検討しているのは事実だが、(メガバンクに買い取りを)打診した事実はない」(広報)としている。

 メガバンクの勘定系システムを買い取るメリットは、融資や銀行間の為替を処理する全銀システムとの接続といった機能を、一から開発するよりも安く、早く実装できること。現在の郵政公社の貯金システムは、融資や全銀システムとの接続といった機能を備えていない。日本郵政は民営・分社化してからできるだけ早い時期に、融資や全銀システムとの接続による他行との相互振り込みといった新サービスを実現したいと考えている。

 ただし、メガバンクから勘定系システムを買い取るにしても、郵政公社が現在稼働させている貯金システムと、買い取った勘定系システムの役割分担をどうするか、あるいは二つの巨大システムをどのように接続してどう運用していくのかといった点は検討が必要だ。一方で、郵政公社は現在、民営・分社化対応で現在の貯金システムを手直しする作業に追われているのが実態。こうした検討に十分な時間を割ける状況ではない。

 開発規模が5130万ステップに及び、メインフレーム95台で動かしている貯金システムと、同1000万ステップを超えるとみられる大手銀行の勘定系システムを連携させるためのシステム開発をトラブルなく完了させるのは、かなりの作業負荷になる。新サービスの検討や開発が重荷になって、民営・分社化時に大規模なシステム障害が発生するような事態は避けなければならない。日本郵政はこうした実情を踏まえ、勘定系システムの買い取りについて検討を進めていかなければならない状況にある。