決勝戦に参加した32体のロボット
決勝戦に参加した32体のロボット
[画像のクリックで拡大表示]
なわ跳びで高い跳躍力を見せたA-Do。1~2cmの高さは到達しているという
なわ跳びで高い跳躍力を見せたA-Do。1~2cmの高さは到達しているという
[画像のクリックで拡大表示]
きれいな衣装でダンスや高速スピンを披露したアリキオン
きれいな衣装でダンスや高速スピンを披露したアリキオン
[画像のクリックで拡大表示]
4本の足を備えてさまざまな形に変形するレイヤードX
4本の足を備えてさまざまな形に変形するレイヤードX
[画像のクリックで拡大表示]
OmniZero.2(左)とMYRO-3の対戦。OmniZero.2は対戦中は常にリング内を走り続けていた
OmniZero.2(左)とMYRO-3の対戦。OmniZero.2は対戦中は常にリング内を走り続けていた
[画像のクリックで拡大表示]
決勝のマジンガア(左)対ダイナマイザー。相手の一瞬の隙をつく攻防は見ごたえがあった
決勝のマジンガア(左)対ダイナマイザー。相手の一瞬の隙をつく攻防は見ごたえがあった
[画像のクリックで拡大表示]
2010年に開催を目指すROBO-ONE宇宙大会構想を明らかにした
2010年に開催を目指すROBO-ONE宇宙大会構想を明らかにした
[画像のクリックで拡大表示]

 2足歩行ロボットの格闘競技会「ROBO-ONE」(ROBO-ONE委員会主催)が3月18、19日、東京・江東区のパナソニックセンター東京にて開催された。今回で第9回目となる。大会の出場に応募した約150台のなかから、審査を通過した82台が、規定演技や格闘戦で技術を競い合った。主催者からは2010年には宇宙空間に衛星を打ち上げ、ロボット大会を開く構想も明らかにされた。

 18日に実施された予選は、各ロボットが自律動作によるデモを実演し、複数の審査員が点数をつけるというもの。2分間のデモに含める規定演技は前回大会と同じく「走る」。力とスピード、バランスのすべてが求められる走行の制御は難しく、高い技術が必要とされる。

 その走る動作で高得点を獲得し、予選1位通過となったのは前田武志氏の「OmniZero.2」。軽やかな動きで小走りや足踏みし、そのまま流れるように走る。走行速度は毎秒80cmにも達するという。あまりにも自然な動きで、何か小さな生き物を見ているようである。ほかにも、光子力研九所の「マジンガア」はステージ上を何度も回りなら走った。スギウラファミリーの「ダイナマイザー」は走行だけでなく片足でジャンプしながらスキップをする動作で身体能力の高さを見せた。

 技術の追求だけでなく、エンターテイメント性を高めたロボットも多く見られた。スミイファミリーの「アリキオン」は派手な衣装を着て音楽に合わせて踊り「今日の気分はカーニバル!」と音声を出すパフォーマンスで観客の目を引きつけた。すがわらゆうすけ氏の「A-Do」は、観客の手拍子の音をセンサーで検知してジャンプしたり、手拍子のタイミングに合わせてなわとびをするというデモを見せ、その技能の高さで会場を盛り上げた。

 変り種は、ASURADA氏の「レイヤードX」。4本の足を備えたヒトデのような形で、そのうちの2本を使って歩行できる。4本は同じ設計となっているので、手足を入れ替えることもできる。

華麗な動きで相手を倒す

 19日の決勝大会では、予選の上位32チームが参加して、トーナメント方式の格闘戦を行った。相手を倒したら1ダウン。3ダウン先取で勝利が決まる。ロボットの能力が向上したため、今回からはリングの周囲を約20cm拡大する措置が取られた。

 予選を1位で通過した「OmniZero.2」は、2戦目で韓国から参加した5kgの超重量級ロボット「MYRO-3」(Myongji Robot)と対戦。走行性能を重視したために1.9kgと軽いOminiZero.2が不利なように見えたが、リング上を走り回り、隙を突いて攻撃するなど、素早い動きで体当たりをして相手からダウンを奪い、見事に勝利。走る能力が格闘においても有効であることを示した。その一方で、重量のあるロボットは制御が難しいため、審査員からはMYRO-3の技術力を評価する声もあった。

 終盤に近づくとロボットの能力だけでなく、操作する側の反射神経が勝負を決めるほどの高レベルな対戦が見られた。決勝は予選でも高い点数を獲得した「マジンガア」と「ダイナマイザー」の対戦。マジンガアは、操縦者の体の周囲にセンサーを取り付け、腕の動きをそのままロボットに伝達できるマスタースレイブ方式を採用。ダイナマイザーが得意のとんぼ返りキックでダウンを奪ったもの、最終的にはマスタースレイブ機構を活かしてダウンを奪ったマジンガアが優勝を手にした。

ROBO-ONE衛星を打ち上げる

 ROBO-ONE委員会は同日、2010年に「第1回ROBO-ONE宇宙大会」を開催する構想も発表した。高度400~600kmにROBO-ONE衛星を打ち上げて、無線通信で地球上からロボットを操作する。ROBO-ONE衛星の大きさは50cm四方を想定。参加するロボットも10cm四方という小さいサイズに納める必要がある。ロボットには命綱をつけ、命綱が伸びきったらダウンとする。

 ただし、宇宙でロボットを動かすには、宇宙でも動くモーターや電磁波の影響に強い半導体を使う必要があるなど、困難も多い。それでも、西村輝一ROBO-ONE委員会代表は、ROBO-ONE参加者の技術が急激に向上してきており「2~3年後には放り投げると着地するロボットも出来る」と説明し、宇宙大会は「難しいからこそチャレンジのしがいがある」と語った。専門家の立場から協力をしている東京大学の中須賀真一教授は「宇宙開発の歴史を見ても、そんなことはできないと思われていたことを実現してきた」として、難しいからできないではなく、やってみることに価値があると説明した。

 本当に宇宙大会が実現できるかどうかは未知数だが、こうした取り組みを重ねることで、ロボット技術が進歩することは間違いない。次回のROBO-ONE大会は、2006年9月16~17日に山形県長井市で開催される。