写真1 ソフトバンクの孫正義代表取締役社長(中央)、ボーダフォン日本法人のウィリアム・ティー・モロー執行役社長(左)、ヤフーの井上雅博代表取締役社長(右)
写真1 ソフトバンクの孫正義代表取締役社長(中央)、ボーダフォン日本法人のウィリアム・ティー・モロー執行役社長(左)、ヤフーの井上雅博代表取締役社長(右)
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写真2 買収を説明するソフトバンクの孫社長
写真2 買収を説明するソフトバンクの孫社長
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写真3 ボーダフォンのワールド・ワイドの展開状況
写真3 ボーダフォンのワールド・ワイドの展開状況
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 ソフトバンクと英ボーダフォンは3月17日、ボーダフォン日本法人の売却で合意したと発表した(写真1)。ソフトバンクの子会社が、1兆7500億円の資金を調達して英国本社が持つ株式を全て買い取り、日本法人の97.7%の株を握ることとなる。今回の買収によって、ソフトバンク・グループの年間売上高は2兆5000億円に達する。また、ボーダフォンの携帯電話1500万回線が加わることで、2600万回線を抱える総合通信事業者となる。

 会見に現れた孫正義ソフトバンク社長は「1日も早く携帯電話の事業を開始したいと思っていた。ゼロから携帯電話のネットワークを構築するのに比べれば、素早くて楽。それにはるかに大きなユーザー基盤でスタートできる。いつまでも3位でいる気はサラサラない」と、喜びを噛み締めながら説明を繰り広げた(写真2)。買収は、2006年の初頭にソフトバンクの孫正義社長から持ちかけたという。

 今回の買収による、ユーザー側の注目はソフトバンクによる“価格破壊”だが、「現時点で新たな価格戦略にコメントすべきではない」(孫社長)として言葉を濁した。今後、ボーダフォンのブランドはソフトバンク独自のものに変えていく。「基本的には新しいブランドで事業を展開する、店舗の看板架け替えなどで、移行期間には半年から1年間かかる」(孫社長)。会見にはヤフーの井上雅博社長も同席し、ヤフーのコンテンツをソフトバンクの携帯電話向けに提供していくことを明らかにした。

 ソフトバンクは今回の買収劇で海外への足がかりもつかんだ。ボーダフォン本社と新たに提携し、日本での共同事業を立ち上げるほか、ワールド・ワイドでの携帯電話事業で協力していくことも明らかにした(写真3)。「ボーダフォンは日本では3位だが、世界では5.1億のユーザーを持っている。これは極めて重要な要素」(孫社長)と提携による海外展開に期待をかける。

 従来、ボーダフォンは携帯電話のインフラを、設備を持たないMVNO(仮想移動通信事業者)に貸し出す計画を立てており、その相手としてソフトバンクが候補が挙がっていた。今度はソフトバンクが貸し出す側に回るが、MVNOへの貸し出しも検討するという。ソフトバンクの方針次第では、MVNOを利用した様々な携帯電話事業者が現れることとなる。

 現在、ボーダフォンの国内ユーザー数は1500万人。1兆7500億円での買収となると1ユーザー当たり12万円弱を投じることとなる。買収価格の妥当性について日経コンピュータの質問に孫社長は「安くも高くもない、いい値段だ」と真顔で答えた。

 なお、調達する買収資金の1兆7500億円のうち、1兆1000億~1兆2000億円はLBO(レバレッジド・バイアウト)で現在のボーダフォン日本法人の信用力によって借り入れる。「今回の買収は、リスクが高すぎるのではないか」との問いに対して、孫社長は「そんなことはない」ときっぱりと回答した。