写真1 記者会見でライブドア株の売却の経緯を語るフジテレビジョンの日枝久会長
写真1 記者会見でライブドア株の売却の経緯を語るフジテレビジョンの日枝久会長
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写真2 会見に登場したフジテレビジョンの日枝会長(左)とUSENの宇野社長(右)
写真2 会見に登場したフジテレビジョンの日枝会長(左)とUSENの宇野社長(右)
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 USENとフジテレビジョンは3月16日17時から都内で記者会見を開催し,フジテレビジョンが保有するライブドア株全株を,USENの宇野康秀代表取締役に売却することを明らかにした。フジテレビジョンが保有するライブドア株は1億3374万株で発行株式総数の12.74%に当たる。

 会見にはフジテレビジョンの日枝久会長とUSENの宇野社長が登場。日枝会長は,「本日取締役会を開催し,宇野康秀氏に売却することを決定し実行した」と発表した(写真1)。また,ライブドア株式に関してフジテレビジョンが被った損害に対しては,証券取引法18条の規定に基づき速やかに賠償を求める考えを明らかにした。

 宇野社長は,「当社のインターネット放送GyaOとライブドアのポータル事業はシナジー効果が図れる」とライブドア株取得の狙いを語った。「株式は個人で取得するが,法務,財務面での評価をさせてもらった後,会社(USEN)としてもライブドアの新体制による再生に協力したいと思っている」と語った。

 フジテレビジョンとUSENの今後の関係について日枝会長は,「USENとは今後も友好的な取引関係を保ちたい。今後もいろいろなことができると思うが,今日の発表はあくまで株式の売却だ」と答えるにとどまった。以下,会見での一問一答(写真2)。

--フジテレビジョンが宇野社長へのライブドア株の売却を決めた経緯は。

(日枝会長)宇野社長と私は以前からの知り合いで,情報通信業界としての地位を確固たるものにした実績を高く評価している。GyaOや映画製作など,USENとは一緒にいろいろなことに取り組んでおり,現場でも交流がある。映像配信のUSENとライブドアのポータルは,良いシナジー効果を発揮するはず。ライブドアが再生するに当たりベストな事業会社だと判断した。今週に入って,価格面など具体的な内容を詰めた。最終的には昨日の夕方に決定した。

--なぜ宇野社長はライブドアへの出資を決めたのか。

(宇野社長)繰り返しになるが,GyaOとライブドアのポータル・サイトのシナジー効果が狙える。USENがネット上で提供するサービスと当社のサービスを統合することで,ユーザーが当社のサービスに接する機会が増える。また,当社とライブドアのネット上のサービスには重複が少ないため,いい補完関係になると考えだ。

--ライブドア株を1株71円と値付けした根拠は。

(日枝会長)ライブドア株の推移を見ながら,弁護士を含む専門家に算出してもらった。この金額を宇野社長に提示し,合意をもらった。ライブドア株の売却には複数のオファーがあったが,宇野社長の話と比べて,ほかは価格が低すぎて到底納得がいくようなものではなかった。

--ライブドアに関連してフジテレビジョンは300億円の損失を出した。日枝会長らの経営責任は。

(日枝会長)経営責任はない。ライブドアとの和解の調整は,将来にわたって拘束されるような条件はすべて拒否してきた。第三者割当増資に関しては,9月まで(市場で持ち株を売却しないという)ロックアップがあったが,粉飾決算があった。当社の法務と財務が1カ月以上かけて評価した結果でベストな経営判断をした。

--フジテレビがライブドアに対して損害賠償を請求するのが分かっていながら,株式を買い取るのはなぜか。

(宇野社長)現在のマーケットにおけるライブドアの株価は,損害賠償を請求されることも含んで付いているもので矛盾はない。

--ライブドアとの提携ならば個人で100億もの金額を出さなくてもできたのではないか。

(宇野社長)業務提携のみだったら,必ずしも株主にならなくてもできたかもしれない。しかし,業務提携を円滑に進めるには,株主として責任を負ってライブドア社員の信頼を勝ち取る必要があると考えた。

--個人で購入する資金調達は。

(宇野社長)金融機関からの借り入れなどで実施する。

--今後ライブドアをUSENの傘下に収めるべく,TOB(株式公開買い付け)などを実施する可能性は。

(宇野社長)まずはライブドアに対する法務面,財務面での調査が先決だ。その上で,もう一歩踏み込んだ業務提携関係を持つことにしても,その方法は一つではない。また現時点で,いずれUSENの法人株にするかどうかは決めていない。