マイクロソフトは3月14日,企業向けライセンス制度「ソフトウエア・アシュアランス(SA)」の新バージョン「SA 2006」を正式に開始した。SA 2006では特典が増え,購入したSAの額に応じて「24時間365日の電話サポート」「導入コンサルティング・サービス」などを受けられるようになった。今回,制度開始に合わせて,特典を受けられる条件の詳細などを明らかにした。

 SAは「バージョンアップ・ライセンス」の代わりに導入された制度であり,当初は「期間限定のバージョンアップ権」に過ぎなかった。しかし最近は,バージョンアップ権以外の特典が次々と追加されており,「マイクロソフトによる保守サービスを受ける権利」となっている。2006年3月に追加されたものを含めて,現在マイクロソフトが提供しているSAの特典は図の通りである。

 図の上は従来からあるSAの特典で,下は今回追加された特典である。特に注目すべき新しい特典は,24時間365日の電話サポートと,WindowsやOfficeソフトの展開計画サービスであろう。これらはいずれも,SAの購入額によって利用できるサービスの規模(回数や期間)が異なる。

240万円分のサーバーSAで1インシデントを付与

 まず24時間365日の電話サポートについて説明しよう。24時間365日の電話サポートは,SAの購入者に対して「インシデント制(回数制)」で提供する。サーバー製品の場合,サーバーやCAL(クライアント・アクセス・ライセンス)のSAを240万円分購入すると1インシデント(24時間365日対応の電話サポートを1回受ける権利)が付与される。OfficeやWindows OSなどのデスクトップ・アプリケーションの場合は,SAを2400万円分購入すると1インシデントが付与される。

 SAの価格(1年当たり)は,サーバー製品の場合でライセンス価格の19%(7月1日以降は25%),デスクトップ製品で同22%(7月1日以降は29%)である。サーバー製品のSAを240万円分購入するためには,ライセンスを1260万円分ほど購入する必要がある。Office Professionalの場合,SAの価格は1年当たり1万1300円(SelectレベルAの場合,7月1日以降は1万4900円)なので,Office ProfessionalをSA付きでおよそ2100本購入すると,1インシデントが付与される。なお,サブスクリプション制度(Enterprise Subscription Agreement)の場合,払った料金がすべてSA購入額としてカウントされるという。

 電話サポートのインシデントは別の製品にも利用できる。例えば,Office ProfessionalのSAを購入して得たサポート・インシデントを使って,サーバー製品の電話サポートを受けられる。

 なおサーバー製品の場合,メールによるサポートであれば,SAを購入しただけで回数無制限で受けられる。

社内パソコンに標準環境を展開する手助けを

 WindowsやOfficeソフトの展開計画サービス(サービス名称は「デスクトップ展開計画サービス」)は,社内のパソコンのOS設定やアプリケーション設定などを標準化(統一)する方法について,ユーザー企業のシステム管理者に対して講習するというサービスである。

 クライアント・パソコンのサポート・コストを引き下げるためには,パソコンの環境(OSの設定やアプリケーションの種類)などを統一した方がよいと言われている。パソコンの環境を統一するためには,ハードウエアの種類をいくつかに統一した上で,ハードウエアごとに「社内標準のディスク・イメージ」を作成し,各パソコンにコピーするのが手っ取り早い。

 マイクロソフトでは,OSやアプリケーションの展開を実現するための製品として,以前よりSA購入企業に対して「Windows PE」を提供している。Windows PEはWindows XP Professionalベースの簡易OS。CD-ROMからブートできる。OSやアプリケーションを展開する際には,Windows PEで展開対象となるマシンをブートし,サーバーなどに保存してある標準ディスク・イメージをダウンロードすればよい。SAの特典である「デスクトップ展開計画サービス」は,このようなOSやアプリケーションの展開を実施する上での,コンサルティングや従業員教育などを行うものである。

 サービス提供期間は1~15日間で,SAの購入が多いほど長い期間のサービスが受けられる。1日だけのサービスの場合,OS展開のための簡単な説明が行われるだけだが,長期になると,ネットワーク設計やセキュリティ設計などについても,デモンストレーションを交えて詳しく教えてもらえる。

 Officeの場合,サービス提供期間はSA購入額700万円以上で1日,同1750万円以上で3日,同7000万円以上で5日,同1億5000万円以上で10日。OSやアプリケーションの展開をシステム・インテグレータなどに頼むのではなく,自社で安上がりに実現しようというユーザーに向いているだろう。

プレミア契約だけで延長サポート期間にHotFixを提供

 プレミア・サポート契約を結んでいるユーザー企業向けの,専用の特典もある。それが「延長HotFixサポート」である。HotFixとは,マイクロソフトが提供する修正プログラムの中でも,あるユーザー企業や製品のために専用に開発され,一般には公開されない修正プログラムである。メインストリーム・サポート期間内(製品発売から最短5年間)は,製品のバグを修正するためのHotFixは無償で,製品のバグに起因しないHotFixは有償で提供する。

 ただしマイクロソフトは,メインストリーム・サポートが終了した製品に関しては,原則としてHotFixは作成しない。これまで,延長サポート(メインストリーム・サポート終了後最短5年間)に入った製品のHotFixを作ってもらいたい場合は,プレミア・サポート契約(年額1000万円以上)を結んだ上で,さらにHotFixを作ってもらうための契約(HotFixを作る/作らないにかかわらず年額1000万円以上)を結ぶ必要があった。それが2006年3月14日以降は,SAを購入していればプレミア・サポート契約だけで,HotFixを作成してもらえるようになる。なお,HotFixを作ってもらうためには,別途作成費用などが必要である。