「企業の経営トップが作成する『内部統制報告書』を偽った場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または両方の罰則を科す」。
上場企業に内部統制システムの構築を義務付けた「日本版SOX法案」の全容が明らかになった。注目は、内部統制に関する虚偽記載や書類の不提出に対して、はっきりと刑事罰を定めた点だ。経営トップに対する罰則に加え、法人に違法行為を問う場合には5億円以下の罰金を規定した。
これらの規定を盛り込んだのは、政府が3月13日に国会に提出した「金融商品取引法(投資サービス法)案」。投資家保護を主目的に、証券取引法などを再編・改正した法案で、いわゆる日本版SOX法は企業の情報開示に規律を与える制度として、この法律に盛り込まれた。
内部統制については、(1)原則すべての上場企業に内部統制システムの導入を義務付ける、(2)義務化は2008年4月以降に始まる事業年度から、(3)対象企業は、年度の決算期ごとに経営者が内部統制システムの「評価」を行い(結果は内部統制報告書で開示)、公認会計士による「監査」を受けた上で、有価証券報告書などと一緒に内閣総理大臣に提出する--ことなどを盛り込んだ(3月10日で既報)。
公開された条文を見ると、企業からの開示情報の中で、「内部統制報告書」は有価証券報告書に準じる重み付けを置いていることが分かる。新法案では今回、有価証券報告書の虚偽記載に対する罰則を、個人で「懲役10年以下か、罰金1000万円以下」、法人で罰金7億円以下と、より厳しく引き上げた。個人で「懲役5年以下」といった内部統制の虚偽に対する罰則はこれよりも軽微とはいえ、現行の有価証券報告書の虚偽と同じ罰則を科している。
また新法案では、内部統制報告書の虚偽によって株主が被った損害に対し、企業が賠償責任を負うことも明記している。算定根拠は、有価証券報告書の虚偽による場合と同じ考え方を適用する。