写真 通信・放送の在り方に関する懇談会の松原聡座長(左から3番目)
写真 通信・放送の在り方に関する懇談会の松原聡座長(左から3番目)
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 竹中平蔵総務大臣の私的な懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」が3月13日,第6回会合を開催した。今回はNHKの橋本元一会長,日本ケーブルテレビ連盟の石橋庸敏理事長代行専務理事,スカイパーフェクト・コミュニケーションズの重村一社長,日本芸能実演家団体協議会(芸団協)実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏など主に放送関係者を召還し,公開ヒアリングの形で進めた。ヒアリングは2時間半近くに及んだ。

 通信に関連した話題では,第3回の会合で「IPマルチキャストを放送と解釈してもよいのでは」とした懇談会の姿勢について,芸団協の椎名運営委員が強く反発。「IPマルチキャストを放送と認めるような法律改正は必要ない」とし,「テレビでの利用しか考えていない契約システムから,マルチユースを前提とした新たな契約システムへシフトすることが解決への道」(椎名運営委員)という立場を明らかにした。そのために,CPRAではネット配信に必要な許諾権の集中管理を進めていると説明した。

 懇談会の構成員からは,集中管理体制の進捗状況について質問が飛んだが,椎名運営委員は「現在はネットなどの再利用に向けた著作権料率の規定を定めているところ。これから作成するコンテンツはもちろん,過去に作成したコンテンツについても扱うことができる」と述べた。

 椎名運営委員は,IPマルチキャストを放送を解釈した場合に,著作権法上の「有線放送」に該当するため,実演家に新たな課題が浮上するとも指摘した。具体的には「IPマルチキャストを放送と解釈する場合は,権利制限についても見直しが不可欠である」とした。ケーブルテレビ(CATV)などの有線放送で地上波を同時再送信する場合は,著作権法第92条で実演家の権利に制限が加えられている。しかしIPマルチキャストによる再送信は,提供範囲が限定されるCATVとは異なるため,実演家の権利が不当に狭められる可能性がある。

 なお今回のヒアリングで,特に厳しい質問を受けたのがNHK。ヒアリングに出席したNHKの橋本会長は,受信料の未払い問題や国際放送におけるコマーシャルの導入などについて説明を繰り広げたが,懇談会の松原聡座長は「視聴者の視点が反映されておらず,執行部内の意見にしか聞こえてこない」と厳しく指摘した(写真)。なお第7回の会合も,放送関係者を招き公開ヒアリングを行う予定。