米グーグル インターナショナルプロダクトマネージャーのケン・トクセイ氏
米グーグル インターナショナルプロダクトマネージャーのケン・トクセイ氏
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今後のグーグルが取り組むべきアイデアをまとめた「グーグル マスタープラン」。項目は日々増え続けているという
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敷地内は広くて開放的。ビーチバレーのコートもある。従業員は増え続けており、周囲の駐車場には空きがないほど
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リラックスするためのビリヤードや卓球台の横では、ノートパソコンを持ち込んでミーティングを開く人の姿も
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 強力な検索技術を軸に、地図情報、ニュース配信、デスクトップ検索など新サービスを次々と開始している米グーグル。Webの新しい使い方の概念をまとめた「Web2.0」のリーダー的存在とも言われている同社で、日本をはじめ世界各国における新サービスの戦略を統括しているケン・トクセイ インターナショナルプロダクトマネージャーに話を聞いた。

■Web2.0という概念が注目を集めている。

 Web2.0は目新しい概念で広く認識されていると思います。ただ、グーグルとしては特定の概念や技術に縛られることはありません。サービスの向上に必要であれば、その技術を使うだけのことです。Web2.0は、既存のサービスを見て、後から概念を当てはめたものだと考えています。
 地図サービスにしても、まずは地図と情報を結び付けてWebベースでもっと便利に使いたい、という発想がありました。これを実現するためにJavaScriptとXMLを組み合わせ、結果としてAjaxと呼ばれる手法が注目されるようになったのです。RSSについても同じです。我々は、革新的なサービスをどう実現していくかという点を考えているのです。

■Web2.0、RSS、Ajaxは重要ではない?。

 Web2.0について社内で議論することはないですね。RSSやAjaxも技術としては使用していますが、「RSSやAjaxを使うぞ」と意図的に取り込んでいるわけではありません。地図をマウスでドラッグして操作できるということは、とても便利なサービスです。その点ではAjaxは重要な技術ですが、我々は技術よりも、サービスの質を向上させることを優先します。技術はサービスの向上を助けるためのものです。

■地図を使ったサービスで、ヤフーのようなポータルサイトを目指しているように見える。

 我々の目指すサービスは、情報を利用しやすいように整理して提供することです。「Googleローカル」では、ユーザーが情報を見つけやすいように、地図と地域情報を組み合わせました。さまざまな情報をできる限り効率的に利用できるシステムを用意することで、ユーザー、コンテンツの提供者、企業、そしてグーグルにとってもウィン−ウィンの関係になれるのです。ポータルサイトのように、必ずしもユーザーが同じサイト内に留まる必要はないのです。

■地図サービスのAPIを提供することで、サービスが競合することはないか。

 競合するとは考えていません。情報の流れがさらに効率的になり、インターネットをもっと便利にしていくことができると考えています。

 サービスを提供する事業者にとっては、グーグルの機能を取り込んで、簡単に便利な地図サービスを提供できるのですから、ユーザーにも、事業者にとってもメリットがあります。

 我々はAPIを無料で使えるようにしており、“ルーズ”な形で公開しています。こうすることで、特定の興味を持った人が独自の地図を作成できます。例えば、チーズショップの地図、アラスカを自転車で旅行するための地図などです。これらの地図を我々で作ることはありません。特定の興味と豊富な知識を持っている人々が独自の地図を作ることで、同じ興味を持った人々が集まり、コミュニティーができるのです。

■マイクロソフトやヤフーなども地図サービスを始めたが。

 他社からも同様のサービスが登場することで、よい補完関係になると考えています。我々のサービスが有益だと認められた、ともいえます。過剰に意識することはありませんが、他社のサービスから学ぶこともあります。

■新サービスを次々と提供できる要因は。

 最も大きな要因は、我々自身が技術に親しんでいるだけでなく、熱心なインターネットのユーザーだということです。我々自身が欲しいサービスを作る、という発想からアイデアが生まれるのです。会社はそれを手助けする環境を作っています。

 就業時間の20%を自分の自由なプロジェクトに割り当てていいというルールも、アイデアが生まれる土壌を支えています。エンジニアが情熱を持てるプロジェクトに時間を割けるのです。

 命令されなくても、アイデアが自然と集まるカルチャーもあります。実現したいアイデアを「テックトーク」というフォーラムで発表することができます。構想段階のアイデアに対し、お互いに批評を加えて詰めていきます。週に何度も開かれ、誰でも参加して意見をいうことができます。社内の学会みたいなものです。

 良いアイデアは自然と社内でも注目され、人が集まり、実現されていきます。実際にサービスを開始するときには、創業者をはじめ経営陣が検討し、ゴーサインを出します。とはいえ、プロジェクトはトップダウンで決まるわけではなく、エンジニアの熱意が支えているのです。アイデアを選択する基準は、利益を生み出すかは重要ではなく、どれだけの人々が使い、便利に感じるのか、ということです。

■今後、どのような方針でサービスを展開していくのか。

 これまでと方針を変えることはありません。ただそのためには、これまで以上に市場を理解し、海外の拠点も拡充していかなければならないでしょう。現在、サービスをさらに迅速に投入できるよう、米国だけでなく、世界各国で優秀な人材を確保しようとしています。どこでも人材が足りません。ただ、サービスが広がったとしても我々の核となる方針は変わりません。