写真1 懇談会に挑む竹中平蔵・総務大臣(左)と松原聡・東洋大学教授(右)
写真1 懇談会に挑む竹中平蔵・総務大臣(左)と松原聡・東洋大学教授(右)
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 竹中平蔵総務大臣直轄の「通信と放送の在り方に関する懇談会」の第5回会合が3月9日に開催された(写真1)。

 今回の懇談会では,(1)電波政策,(2)通信と放送の融合法制,(3)省庁再編,(4)NHK問題,(5)放送の問題,(6)通信の問題,(7)研究開発−−という七つの項目を議論した。「これまで議論されてこなかった(1)~(3)を新たに議論し,これまで取り上げてきた残りの(4)~(7)のテーマについてさらに議論を深めた」(竹中大臣)。

 中でも注目が集まったのは(6)の通信の問題について。ここではNTTの組織形態について議論されているが,前回の会合後,「NTTの組織は抜本的な見直しが必要という意見で構成員が一致した」と,座長の松原聡東洋大学教授が発表していた。しかし今回の会合では,NTTの組織形態に関してかなり活発な意見が交わされたものの,「(NTTの今後の組織形態について)構成員で一致した合意事項はなかった」(松原教授)。

 松原教授によると,「東西NTT,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモはバラバラに資本分離した方がよい」,「仮にこの4社が資本分離した場合,再度の融合や提携が許されるのか」,「NTT東西のアクセス部門を構造分離しないと競争が進まないのでは」などの意見が出されたという。とはいえ,「NTTの在り方はここのままではよくないという点で構成員の意見は一致しているが,無理やり組織を変えることのデメリットもあるのではという意見も出ている」とし,今回は新たな合意に至らなかったと松原教授は説明する。

 このほか(1)の電波政策については,「国土交通省などが持つ公共用途の周波数を含めて再編すべき」,(2)の融合法制では「通信と放送のサービスが一体化へ向かう中で,法律も一つになったほうがよい」,(3)の省庁再編については「IT関連の部署が総務省と経済産業省に分かれており,著作権関連の部署が文部科学省にある。通信と放送の融合,IT化にマイナスなので,一つにまとめるべき」という点で,それぞれ構成員の合意が取れたという。

 また(4)のNHK問題では,「八つのチャンネルは多すぎるので縮減すべき」という点を改めて確認。国際放送については,「海外にいる日本人向けの放送は,現在の衛星放送だけでなくIPマルチキャスト放送も加えることが合理的」という点で合意した。(5)の民放も含めた放送問題と,(7)の研究開発については,今回はあまり議論の時間が割かれなかったが,「NHKとNTTの技術開発部門は,たとえばNICT(独立行政法人 情報通信研究機構)にまとめる形でいいのではないか」という方向性が,前回までの会合で出されている。