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 富士通は3月9日、手のひらを使う静脈認証システムの新製品「PalmSecureシリーズ」の販売を開始、4月末から出荷すると発表した(写真)。新製品は大きさが旧製品の4分の1、価格が半額に、認証にかかる時間も半分にした。静脈認証というと金融機関のATMへの搭載が注目が集まりがちだが、USBインタフェースを備えるため、サーバーやパソコンに接続して認証装置として利用することが可能だ。

 静脈認証は、生体認証(バイオメトリクス認証)の一種で個々人に固有の静脈パターンを利用する。認証には様々な身体の部位が使えるが、富士通は手のひらを使った認証装置を提供している。不特定多数のユーザーが使うシステムでは、清潔感などの心理的な理由も採用の決め手となるため、非接触型の静脈認証が採用されるケースが増えている。

 新製品の発売に併せて、SDK(ソフトウエア開発キット)の提供も開始する。若林晃ユビキタス事業本部バイオメトリクス認証システム部部長は、「SDKを使えば、自動車やコピー機、建物やロッカーなどさまざまなモノに静脈認証を組み込める」と語る。IT機器ベンダーやソフトベンダーがをPalmSecureを使って独自のソリューションを開発することも可能だ。

 若林部長は、「我々の想像を超えた静脈認証の使い方を、顧客が逆提案してくれる。ソリューションプロバイダはSDKを使ってそれらの提案を実現してほしい」と語る。これまでもアミューズメント施設で、静脈認証装置をアトラクションの利用や入場チケットの代わりにを使うといったケースがあった。だが、なかにはSDKがなかったため、逆提案を断ってしまうケースもあったという。

 SDKは、センサーとUSBケーブルなどの周辺機器、ドライバソフト、ユーザー認証などのサンプルアプリケーションのソースコード、商談用のデモソフトがセットになっている。またソリューションを開発しやすいように、API(アプリケーション・プログラム・インタフェース)に、生体認証の業界団体「BioAPIコンソーシアム」が策定・標準化した「BioAPI」を採用した。従来は富士通独自仕様のAPIだけだった。

 新しいセンサーの大きさは35×35×27mm。SDKの価格は35万円。センサー自体の価格は条件によって変わり3~4万円になるもようだ。旧製品の価格は7万4000円だった。若林部長は「技術的には携帯電話に搭載できるレベルまで小型化することが可能」とする。

 同社の静脈認証装置は販売台数が1万台を超えており、今後3年間での売り上げ目標を、静脈認証関連システム全体で800億円と掲げる。売り上げ目標には欧米、豪州、アジアでの売り上げを含まれており、各国で同日に販売を開始した。