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 富士通は3月9日,非接触型手のひら静脈認証システムの新製品「PalmSecure」を発表した。従来製品と比較して,センサーの面積を4分の1にしたことや,照合にかかる時間や販売価格を半分以下にしたことなどが特徴。同システムをカスタマイズするためのSDK(開発キット)も用意する。センサーと基本ソフトで構成される「PalmSecure Sensor」の参考価格は,1センサーあたり3~4万円。SDKの販売価格は35万円(税別)。いずれも本日から販売を開始する。出荷時期は4月末を予定。

 手のひら静脈認証は,静脈のパターンが人によって異なることを利用する生体認証(バイオメトリクス)技術。非接触型手のひら静脈認証では,センサーから光を出し,手のひらからの反射光をセンサーで“撮影”することで,手のひらの静脈パターンを読み取る。そして,そのパターンと登録されているパターンを照合することで,本人かどうかを認証する。

 ユビキタスシステム事業本部 バイオメトリクス認証システム部部長の若林晃氏によれば,非接触型手のひら静脈認証技術を実用化しているのは同社だけだという。国内では,2004年7月に同装置の販売を開始して以来,1万台を超える販売実績があるという。例えば,現時点では41社の金融機関に採用されているとする。3月末以降には,長野県信用組合や諏訪信用金庫でも導入を予定している。

 従来製品のセンサーのサイズは,70×70×27mm。それに対して,今回発表したセンサーは35×35×27mm。小型化に成功したことで,「デスクトップPCのキーボードやノートパソコンなどに埋め込みやすくなった」(若林氏)。

 また,センサーと基本ソフト(ドライバと照合アルゴリズムのランタイム・ライブラリ)の性能を向上させたことで,照合にかかる時間を半分以下にしたという。例えば,基本ソフトをCeleron 600MHzのPCで実行する場合,従来製品では,撮影に2秒,照合に1秒かかったが,新製品では,それぞれ1秒および0.5秒に短縮できたいう。

 加えて,富士通以外のベンダーがPalmSecureを“部品”として利用できるように,SDKを用意した。SDKには,センサーと基本ソフトのほかに,サンプル・アプリケーションのソースコードなどが含まれる。APIについても,従来は独自だったものを,生体認証装置の標準APIである「Bio-API」に準拠するようにした。

 「PalmSecureは,いわばカメラの原理で静脈パターンを読み取る非接触型なので,原理的にはセンサーをもっと小さくできる。将来的には,携帯電話機に載せられるぐらい小さくする」(若林氏)

◎参考資料
「非接触型手のひら静脈認証装置」の小型・高性能化を実現(プレスリリース)