無線LANチップ・ベンダーであるイスラエルのメタリンクは3月8日,次世代無線LAN規格のIEEE 802.11nを利用した動画配信のデモンストレーションを公開した。同社は11nドラフト対応チップ「WLANplus」を販売しており,これを組み込んだリファレンス機器を用いてデモを実施した(写真1)。
デモは,ホテルのスイートルームの一室で行った。寝室に配信サーバーと無線LANアクセス・ポイントを,浴室,リビング・ルーム,別の寝室に受信用端末とMPEGデコード用パソコン,テレビを設置。内容が異なるMPEG-4フォーマットのHD(高精細)動画を,3本同時に各部屋のテレビに配信した。周波数は,無線LANで利用する5GHz帯のチャネルのうち一つだけを利用した。
動画の帯域はそれぞれ10M~15Mビット/秒程度で合計で30M~40Mビットになるが,どのテレビでも映像の途切れやノイズが入ることなく受信できた。受信状況は良好であり,部屋の扉を閉めたりアンテナの近くに人が立った場合も映像に変化がなく,受信側のアンテナを両手で握り締めてはじめて映像が乱れるというレベルだった。
IEEE 802.11nは,100Mビット/秒以上のスループットを実現する次世代の無線LAN規格。標準化団体のIEEE(米国電気電子技術者協会)で,2006年1月にドラフト(草案)仕様が承認された。メタリンクの現行チップは,このドラフト仕様に準拠したテスト用の製品。最終的な標準規格に対応した商用製品は,「2006年下期に発売する。価格は20ドル以下となる」(バリー・ボリンスキー WLANマーケティング担当副社長,写真2)とした。