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 米Intel社は、2006年3月7日から始まる開発者向け会議IDF(Intel Developer Forum)を前に、プレス向けのイベントを開催し、同社の研究開発(R&D)に関する最新状況を報告した。同社は世界の18箇所に研究開発拠点をもち、合計1100人の研究者がいる。このところ同社は「半導体企業」から「プラットフォーム企業」への脱却を宣言していることもあり、最近は半導体以外の研究テーマへの取り組みに比重を置いているという。特に新規の研究テーマを中心に、英国ケンブリッジや、米国内ではバークレイ、シアトル、ピッツバーグにおいて大学との協業を推し進めている。


 今回は、ネットワーク関連で具体的な成果を三つ披露した。1つは誤り検出符号CRCの生成アルゴリズムである。同社が独自に開発したアルゴリズム「SB8(Slicing-by-8)」を使うと、従来の方式に比べてCRCの処理時間が1/3になるという。同社のマイクロプロセサでソフトウエア処理することを前提に調べたところ、従来の「Sarwate」と呼ぶCRCでは1バイト当たり7サイクルを要していたが、SB8では2.2サイクルで済むとしている。CRC処理のソフトウエアは8Kバイト以下で済むことから、キャッシュに常駐させた使い方を想定しているようだ。CRCを採用するiSCSIのSAN環境における入出力処理の性能向上に役立つと同社は期待する。SB8のソース・コードは、SourceForge.netで公開を始めた。無料にて入手できる。


 2つ目は、世界各国における無線通信のシームレスなローミング・サービスを提供するための実験である。同社は、世界の5都市(サンフランシスコ、シンガポール、ストックホルム、ジュネーブ、ロンドンにおいて、1つのSIMカードで統一的に認証が可能なローミング・サービスの試行を始めた。無線LANおよび3Gネットワークを対象にするが、将来はWiMAXもこの対象に含めたい考えだ。2006年中に、さらに多くの都市でこのローミング・サービスを受けられるようにする予定だという。


 3つ目は、既に2月に開催された半導体の学会「ISSCC」でも報告済みの内容だが、複数のアンテナによって多重化したデータ送信の効率化を図るMIMO(Multiple Input, Multiple Output)技術を実装したLSIについて言及した。2×2構成のMIMOを1チップに実装し、108Mビット/秒でデータ転送を達成したとする。同社は、通常のCMOS技術でLSIを製造できることにより、コスト面でメリットがあることを強調した。


 同社のコア事業であるマイクロプロセサについては、具体的な成果こそ示さなかったものの、将来に向けての夢を語った。同社は現在、1チップに2つのCPUコアを集積するデュアルコア化を進めているが、「近いうちに4コア版を実用化、いずれは数十コア、さらに数百コアと高集積化させる」と意気込みを見せた。マルチコアの目的は、より少ない消費電力で高い性能を得ることにあるとする。


 なお明日から3日間に渡って、パソコンやサーバ、周辺機器の開発者を対象にした開発者向け会議が始まる。ここで紹介した研究開発成果のほか、より具体的なマイクロプロセサの新技術やロードマップなどが提示される見込みである。明日以降も現地から続報をお届けする。

■変更履歴
SB8のソース・コードのダウンロード元サイトとして紹介SourceForge.netのリンク先に誤りがありましたので,訂正しました[2006/03/07 13:19]